【フロリダ州セントピーターズバーグ発】ヤンキースの田中将大投手(25)の次回登板予定は22日(同23日)の敵地フェンウェイ・パークでのレッドソックス戦だ。熱狂的なレッドソックスファンに囲まれる完全アウェー状態で、野球人生で初めてといえる大ブーイングを浴びての投球になるのは間違いない。田中は“難敵”とどう戦うのか――。

 全米のプロスポーツでヤンキースとレッドソックスは最大のライバル関係といわれる。田中はメジャー4戦目でその宿命の戦いのマウンドに上がる。おまけに敵地だ。緊張して不思議ではないのだが、田中は相変わらずだった。「日本にいながらも、そこ(ボストン)の一戦っていうのは特別なものがあるっていうのは知っていましたし、敵地のフェンウェイで投げられるというのは、自分にとっても今後のいい経験になる。同じリーグのライバルですし、登板する数も増えてくる。まず最初ということなんで、そのなかでもいい投球をしたいなとは思います」

 ヤンキー・スタジアムで10日(同11日)から行われたレッドソックス4連戦では登板の機会はなく、ベンチから見届けただけ。打線の印象については「もちろん名前だけでも知っているバッターが、ほとんどラインアップに並ぶので、なんとなくベンチから見ている印象っていうのはもちろんありますけども、まだ実際自分が投げてないんで何とも言えないです」

 警戒するのは打線だけではない。両翼(右翼まで92メートル、左翼まで95メートル)が狭く、ほとんどふくらみがない左中間に高さ約11・3メートルのフェンス・通称“グリーンモンスター”がそびえる、独特の形状は投手泣かせだ。

 「現時点では特に(対策はない)。投げながら対応していく部分だと思うので、投げる前からあんまりああだこうだは考えずに、投げながら相手に合わせて自分が変わっていければなと思います」と、従来通りに、先入観を持たずにマウンドに上がる。

 平常心の田中だが、最大の敵ともいえる熱狂的なレッドソックスファンからの大ブーイングはどうするのか。憎きヤ軍、さらに7年総額1億5500万ドル(約159億円)の超大型契約を結んだ“鳴り物入りの新人”だけに、えげつないブーイングが浴びせられるのは必至。しかし、田中は「(初先発した)トロントでも結構うるさかったんで。汚い言葉もだいたいわかりますけども、ほとんど言っていることはわかんないんで、まあ、いいかなと思います」。“ご自由にどうぞ”とばかりに受け流し、笑顔でこう切り返した。

「どう対応するんですか、逆に教えてくださいよ。それは僕が収めることができるものではないから、一つの『音』として聞いて、その中で投げるしかないと思いますけどね。一人ひとり、ファンの人たちに『やめてください、やめてください、やめてください』なんて言うわけにもいかないですしね」

 また、今回のレッドソックス戦登板はチームにとっても重要。19日(同20日)のレイズ戦に先発し、5回途中で右ヒジ痛を訴え降板したノバが、20日(日本時間21日)、15日間の故障者リスト入り。長期離脱する可能性が高い。田中にかかる比重が増す。「僕は僕にできることをやるだけ。もちろんチームにとっては痛いですけど、自分自身のやることはいかなる状況でも変わらない。そこに対してしっかりと準備して入っていけるようにやっていって、試合では自分のパフォーマンスを出すというところだけだと思う」

 この日の田中はストレッチで体をほぐした程度。ライバルとの決戦に備えた。