今年のプロ野球が28日、いよいよ開幕。前年セの覇者の巨人は開幕前日の27日、本拠地の東京ドームで最終調整に余念がなかった。とりわけ今年は球団創設80周年のメモリアルイヤー。目指す日本一奪回に向け、原辰徳監督(55)は「短期決戦を勝ち抜く野球」をテーマに掲げ、主将の阿部慎之助捕手(35)は“ゴジラの教え”をもとに、旧来スタイルからの脱却を図ろうとしている。

 開幕前日とは思えない落ち着いた口調だった。「まだまだ途上でいいと思います。今いるメンバーでベストの布陣を敷いて成長していけるように戦っていきたい」。原監督は高ぶる思いを抑えるように意気込みを語った。

 今季も戦力はセのライバル球団を圧倒。リーグ3連覇はもはや“当然”の目標であり、チームが見据えるのはその先、CSと日本シリーズを勝ち抜くことにある。

「昨年は結果的に、1つ勝てなかったことによって、日本一連覇を達成できなかった。チームの勢いもそこで止まった」。キャンプ中から原監督の頭を支配していたのは、楽天との日本シリーズ第7戦に敗れた光景だ。その上で指揮官は「今年はシーズン中でも、ときに短期決戦を念頭に置いた用兵、戦いをしていく」とも語る。

 選手たちも今季は「短期決戦」を意識して臨むつもりだ。主将の阿部はこの日「今年はチームがどんな状況でもヘラヘラしているリーダーでありたい」と語ったが、その言葉の裏には、宮崎キャンプで臨時コーチを務めた松井秀喜氏(39)から授かった言葉が土台にある。

 阿部がキャンプで松井氏に「どうしても聞きたかった」というのが「ヤンキースのような常勝球団の選手たちは、特別な試合に臨む前にどんな過ごし方をしているのか」だった。主将として、日本シリーズでチームの力を引き出しきれなかったという悔しさからだ。

 松井氏の答えは「中心選手ほど普段と変わらない。試合直前まで音楽を聴いたり、ゲームをしたり、みんな結構リラックスしているもんだよ」。阿部は「ふに落ちたね」と妙にうなずいた。

 巨人では特別な一戦の前に、長嶋監督が「俺たちは勝つ!」と連呼した伝説の“10・8”のような“儀式”を行ったり、自らにプレッシャーをかけることで士気を高めるのが通例だった。昨季の日本シリーズでも阿部は「俺が打たなきゃ負ける」と悲壮な覚悟で臨んだが結果的にチームは敗れた。

 開幕戦前のこの日「ヘラヘラしていても叩かないでくださいよ」と冗談ぽく笑った阿部だが、実はこれこそが松井氏の教えを受けて導入した“ヤンキース流”。球団創設80周年の開幕戦という特別な一戦に、今年の巨人はあえてヘラヘラした顔で臨もうとしている。