指揮官には深慮遠謀があるようだ。21日の中日戦(ナゴヤドーム)で先発した則本昂大(23)は6回を投げ、2安打4三振無失点の快投。ところが、星野仙一監督(67)は「ボールそのものは、いつものいい時の則本じゃない」。則本が当確とささやかれている開幕投手についても「(開幕の)前の日になれば分かる」と煙幕を張った。

 とはいえ、中6日で開幕日(28日・西武戦=西武ドーム)を迎えることから、この日に登板した則本が、やはり開幕投手の最有力。対戦相手の西武関係者も「則本が来るでしょう」と見ている。

 一体なぜ、指揮官は明言を避け続けているのか。それはヤンキースに移籍した田中将大に代わる新エースとして則本に猛奮起を促すためだ。ドラフト1位・松井裕樹投手(18=桐光学園)を高卒新人58年ぶりの開幕投手に抜てきすることまで示唆しているのは、大本命・則本に安心材料を与えず、危機感をギリギリまであおろうとしているからに他ならない。

 昨季プロ1年目の則本は開幕投手を務め、15勝をマークして新人王を獲得。日本一に大きく貢献したが、オフはイベントに引っ張りダコとなり、自主トレも十分にはできなかった。そんな則本に星野監督は「2年やってなんぼだ!」と厳しい姿勢を見せ続けている。

「今日は“しっかりやらないと”と、いい緊張感がありました」とは、登板を終えた則本の弁。前回登板のヤクルト戦では5回6失点で炎上しただけに、ここのところずっと手厳しい指揮官からプレッシャーをかけられて、相当に気合が入っていたようだ。

 視察した西武関係者も「出遅れていたけど、しっかりと仕上げてきた」と則本への警戒を強めた。星野監督は内心でほくそ笑んでいるかもしれない。