【フロリダ州タンパ発】鮮烈なデビューを飾ったヤンキースの田中将大投手(25)が、日本メディアの球数制限を不安視する報道に真っ向から反論した。1日(同2日)のフィリーズとのオープン戦で5回に3番手でメジャー初登板。2回を投げ、2安打無失点、3三振と期待通りの好投を見せた。グラウンドで笑顔の田中だが、納得できないことがある。メジャー流の調整では“投げ込み不足”で開幕に向けて不安と報じられていることだ。田中の主張は――。

 堂々のデビューだった。2安打されたものの、完全に捉えられた打球はゼロ。ボールが抜けたり、指にかかりすぎることもなかった。エース左腕のサバシアをして「ナスティー(えげつない)」といわしめたスプリット、スライダーはもちろん、全7球種を披露した。メジャースカウト陣が高く評価していた直球の制球力も抜群だった。


 メジャー初登板で結果を出した田中だが、いまだ国内でくすぶり続けているのが“投げ込み不足”への不安だ。2月15日(同16日)のキャンプインから、オープン戦初登板まで、ブルペン5回、フリー打撃2回で合計221球しか投げていない。およそ1か月のキャンプ期間中、1000球投げるのが当たり前の日本の投手と比べると明らかに少ない。楽天時代の田中もそれに準じていただけに、事あるごとに“投げ込み不足”“日米との練習量の違い”が話題に上った。


 田中はそういった質問に「普通にやっているだけです」「特に気にしてないです。そのなか(投球数が少ないなか)で集中してやるだけ」と、多くを語らなかったが、改めてその点を直撃すると、こう口を開いた。


 田中 そもそも(自分は)投げ込みするタイプじゃないんです。(楽天で)キャンプ中に100球投げた日もありましたが、なんとなしに投げていただけですよ。今の(メジャーでの)球数で全然満足してますよ。


 確かに楽天時代、田中が連日100球以上の投げ込みをしたケースはほとんどなかったといってい。では、なぜ“少ない”球数で十分なのか。


 田中 実際、ゲームで投げなきゃ意味がないですから。ブルペンでつかむものもあるでしょうけど、それじゃ、なんで100球も投げんねんって思うんです。中には100球、200球以上投げる方もいますけど、僕はその必要性を感じないんです。


 投手は実戦で投げてナンボ。そこでつかみ、学んだたことにこそ本当の価値がある。それが田中の考えなのだ。


 投げ込みには別の理由もある。それはフォーム固めだ。たくさん投げて無駄な力が抜けたときにこそ、理想的なフォームが生まれ、感覚がわかってくる、といった考え方だ。これについても田中の答えは明快だった。


 田中 多く投げて疲れてから無駄な力が抜けてっていうのもありますが…、でも試合中、そんなに疲れてからじゃ駄目だと思うんですよね。


 試合をメーンに考えたとき、疲れてから固まるフォームは実戦的ではないということ。田中の投げ込み不足への反論は、持ち前の適応力の早さもさることながら、こうしたポリシーがあってこそだ。


 不安論調を言葉ではなく結果で払拭した田中。周囲が思っている以上にメジャーにしっかりとアジャストしている。次回登板予定の6日(同7日)のフィリーズ戦でも素晴らしい投球を見せてくれるだろう。