阪神・藤浪晋太郎投手(19)が状況に応じて力を加減する「省エネ投法」のマスターを目指している。目標はヤンキース・田中将大投手(25)だ。この無敗男のような効率的な投球を習得するためには“打者心理”を熟知する必要がある。そこで掛布雅之GM付育成&打撃コーディネーター(DC=58)ら猛虎打線を支えた歴代の強打者が援軍として立ち上がる。

 これまで藤浪は実戦3試合に登板し、7イニングで12奪三振。「直球の走りも悪くない。勝負どころでしっかり三振を取れている」と手応えも十分だ。制球力、球威アップのために昨オフから取り組んできた投球フォームの微調整や体力アップの成果が早くも出ている。

 三振でなければ失点を許してしまう。そんな場面で三振を奪うことができる球威と制球力をゲットした藤浪が重視しているのがメリハリを付けた投球術だ。勝負どころで全力を発揮するには、走者がいない時や下位打線では力を温存する必要がある。昨年6月の楽天戦ではそんな投球術を実践する田中の姿を目の当たりにして「走者を出してからの投球が全然違う」と驚きを隠せなかった。

 そんな藤浪の強力援軍として名乗りを上げたのがOB軍団だ。しかも、投手出身ではなく野手OB。あるOBは「メリハリのある投球は一流投手の条件だけに藤浪もマスターしなければならない。そのためには打者心理を学ぶことも大事。特に強打者ほど独特の感性を持っている。そういうものを知っておかないと痛い目に遭う。いろいろな打者の話を聞いておくことでマウンドで力の加減を判断する時に役立つ」と指摘する。

 現在、虎の4番を務めた掛布DC、強力助っ人だったオマリー打撃コーチ補佐がチームに在籍。さらに無類の勝負強さを誇った岡田彰布氏、恐怖の1番打者と呼ばれた真弓明信氏、鉄人・金本知憲氏など実績十分の強打者OBも足しげく球場に足を運んでいる。これらの大先輩の打撃理論を学ぶことで「省エネ投球」に磨きをかけようというのだ。

 もちろんOB軍団も「現場に対して我々ができることは何でもする。遠慮なく言ってほしい」(OB会幹部)と力強く全面協力を宣言。OBも一丸となって藤浪を虎のエースに育て上げる。