<前田幸長の直球勝負>プロ2年目の二刀流は進化が期待できるのか。日本ハム・大谷翔平投手(19)が22日、ロッテとのオープン戦(名護)に先発。3回を投げて4安打1失点で練習試合を含めた実戦3戦目(9イニング目)にして初失点を喫した。まだまだ課題山積の“未完の大器”を本紙評論家の前田幸長氏が直撃。当人の口からはおきて破りの逆質問が飛び出した。

 変化球の制球には、まだ課題がある。この日の大谷の投球についての率直な感想だ。ロッテ戦で8球投げたスライダーはすべてがボール。カーブも4球のうちストライクが2球と、決して褒められる内容ではなかった。

 投球を終えた彼を直撃してみた。走者がいない時にはノーワインドアップで投げていたフォームを、今年は全てセットポジションに統一。その意図を尋ねると「上体をひねらず平行に捕手方向に移動するためです」。制球を安定させるための取り組みとはいえ、成果が出てくるのはもう少し時間がかかりそうだ。

 威力があり打者を押し込める直球はコースを狙わなくてもゾーン内に入っていれば、ある程度はアバウトでもOK。ただし球速の落ちる変化球はコース、高さを制球できなければ意味がない。そして苦しい時にストライクを取れる変化球が2、3種類なければ本人や首脳陣が目指すダルビッシュ(レンジャーズ)や田中(ヤンキース)クラスの投手には近づけない。 もちろん本人も、それを自覚している。だからこそ、彼は取材者側の私に次のような逆質問をぶつけてきたのだろう。

 大谷 制球をつけるために前田さんは現役時代、どういったところを意識していましたか?

 前田氏 ゾーンを意識しなくてもストライクが投げられるフォームを早く見つけることだよ。

 大谷は関心を持って私の話を聞いてくれていたが、これは口で言うほど簡単な作業ではない。そのフォームが見つけられずに球界を去っていった投手はごまんといる。ちなみに私の場合は「軸足」と「体幹」、そして「リリース時の利き腕が肩に対して45度のポジションになること」――この3つの“軸”を作ることでフォームが確立し、制球の安定に至った。

 どんな状況においても正しいフォームを常に再現できれば、制球は必ず安定する。

 その感覚をいかに見つけ、体に染み込ませていくか。彼が持っている素質は間違いないが、それを開花させるのは本人の努力次第だ。

「二刀流と言われるのは抵抗があるんですけど…。でも投手でいえばダルビッシュさんや田中(将)さん、打者なら(自軍の)中田さんを目指したいです」

 本気で打者と投手の一流どころを目指す覚悟を耳にして、私は“ひょっとして彼ならばできるんじゃないか”という期待を抱いている。

(本紙評論家)