【フロリダ州タンパ発】ヤンキースの田中将大投手(25)が21日(日本時間22日)、メジャーで初めて打者を立たせての投球練習を行った。すべての球種がコントロールされた内容で、特に宝刀・スプリットは正捕手マキャンをして「テーブルの上から落ちるような鋭さ」と言わしめる衝撃の“デビュー”となった。またジョー・ジラルディ監督(49)は今後の具体的起用法についても言及した。

「ワオッ!」

 田中が宝刀・スプリットを投じると、打席に立ったオースティン・ロマイン捕手は思わず声を上げた。名刺代わりの一球で、昨季メジャーで60試合に出場した25歳の若武者を完全に浮足立たせた。

 打者に対峙しての投球は昨年の日本シリーズ第7戦以来。田中は「全然、違和感なかったです。今日は自然と入れました」と振り返ったが、周囲に与えたインパクトは強烈だった。

 午前8時19分にグラウンド入りし、ブルペンで35球を投げ、本球場のマウンドに上がったのが8時50分。今季の女房役となるマキャンと初バッテリーを組み、ロマインとマイナー選手3人に対し計25球を投じた。

「(マキャンには)今日はまだ最初だから真っすぐを多めにお願いしますと言った」(田中)。直球主体の投球ながら、スプリットで衝撃を与えた。

 ロマインは「“今の球は何だ?”と聞くために振り返らなければならなかった。今までの野球人生で見たことない球だった。まだ(捕手として)受けたことがないから彼の球についてあれこれ言えないが、打者の立場から言えば何か特別なものを感じる」と大興奮。マキャンも「たぶん80%くらいの状態だろう」としながらも「1度受けただけだが、素晴らしい球を投げることが分かった。特にスプリッターはテーブルの上から落ちるように鋭く、速球と全く同じ投球フォームで投げてくる。それが打者にバットを出させ空振りさせるカギだ。すべての投球がコントロールされていた」と最大級の賛辞を送った。そんな周囲の反応をよそに、田中は「バッターが立って、また違うシチュエーションになったが、ああいう雰囲気の中でもしっかりと自分のボールを投げられたというのは良かったんじゃないかなとは思います」と冷静そのものだった。

 一方で収穫も口にした。それはマキャンの体格で「すごく的が大きいといいますか、近く感じるわけではないがターゲットは大きいなとは思いますね。安心感はありました」と好感触。楽天時代は179センチ、82キロの嶋とバッテリーを組むことが多く、191センチ、104キロの“大型女房”は頼もしく映ったようだ。

 こうなると待たれるのが田中の実戦デビュー。ジラルディ監督は「オープン戦で他の投手より早く登板することはない。他の先発投手と同じように基本的に6回先発することになるだろう」と方針を語った。「同じア・リーグのチームとの試合を避けるのでは?」との臆測もあったが、指揮官は「オープン戦で対戦を避けるかどうかよりも、彼にとって今はメジャーの打者をたくさん見ることが大事。少しでも環境に慣れて心地よくいられることが大切だ」とした。

 また、シーズン中の起用法についても言及した。エースのサバシア、黒田に次ぐ3番手という位置付けだったが、これを“保留”。ツーシームやスプリット、スライダー系を多投する黒田とタイプが似ている点を指摘されると「似ている部分も確かにあるかもしれない。ローテーションを組む上で2人を続けるかどうか、これから考えなくてはならないかもしれない」と、オープン戦を見ながら“再考”することを示唆した。

 田中は「ゲームに入ってくるともっと力も入るし、シチュエーションも変わってくる。そういうのにも備えて、いい球を投げられる確率を徐々にしっかりと上げていきたいと思います」と前を見据えた。一歩ずつ、順調に階段を上っている。