“ゴジラコーチ”が躍動した。巨人のOBで元ヤンキースの松井秀喜氏(39)が1日、古巣の宮崎キャンプで臨時コーチとして始動。二軍練習を視察した際には元背番号55の大田泰示外野手(23)へ助言を送るなど、キャンプ初日から精力的に動いた。日米の球界に大きな功績を残した超大物OBの一挙一動から、Gナインも様々なことを学んだようだ。

 自ら歩み寄った。一軍のアップ終了後、二軍練習を視察した松井氏はフリー打撃を行っていた若手野手陣に熱いまなざしを向けた。その中で注目したのが、伸び悩んだまま低迷を続けている“未完の大砲”大田だった。

 高校通算65本塁打の長距離砲として期待され、松井氏の「55」を継承したもののプロ入り5年間で通算本塁打はわずか2本。今オフに心機一転、背番号44となったとはいえ、プロ6年目の今季は生き残りをかけた勝負の1年になる。

 古巣でかつて「ゴジラ後継者」と目された若者が、岐路に立たされている——。そう思うと松井氏は、居ても立ってもいられなくなったのだろう。まずはティー打撃を行っていた大田へケージ越しに話しかけ、リラックスした表情で談笑。打撃練習が終わると、外野にいた大田のもとへ再び歩み寄り、身ぶり手ぶりを交えながらアドバイスを送った。5分弱の短い時間ではあったが、その一語一句が大田にとって金言となったのは言うまでもない。松井氏は“未完の大砲”について、こう語った。

「体格が素晴らしいし、動きもいい。スイングも力強い。どんな会話を交わしたか? これは2人の話なので言えない」

 アドバイスの内容は明らかにしなかったが、その潜在能力は認めたようだ。一方の大田も「どんな会話を交わしたかはノーコメントで…。これは約束したことなので。でも松井さんに練習を見ていただいたことに感謝して、これからも励んでいきたい。このチャンスを逃したら、いつ来るか分からないから」とゴジラコーチのマンツーマン指導に感謝感激し、何かをつかんだ様子だった。

 その後、松井氏はブルペンで宮国らの投球練習を見守り、一軍練習が行われていたサンマリンスタジアムへ移動。原監督とともに“原タワー”から阿部や高橋由ら主力陣のフリー打撃に熱視線を送った。指揮官がフリー打撃を終えた高橋由を呼び寄せ、松井氏とともに3ショットで会話を交わすシーンも見られた。「今日はファームのほうにも行ったということで、何人かの選手の名前も挙がった。『時間があるので、じっくり見ていきます』という報告を受けた」とは原監督の弁。指揮官も松井氏の指導ぶりに満足そうな表情で「合格点」を与えていた。

 木の花ドームでは、亀井をのフリー打撃の際に登板。短パン姿で95球を投げた。「選手たちがしっかりと体をつくって、いいスタートを切っているなという印象を受けた。はつらつして元気な姿を見て頼もしいという雰囲気が出ていましたね。選手とコーチ? 全然違いますね。違和感は多少ありますけど、このために来ている」と最後に力強く語ったゴジラコーチ。宮崎でのフィーバーは、まだしばらく続きそうだ。