ゴジラが実に12年ぶりの宮崎再上陸を果たした。巨人の宮崎キャンプで臨時コーチを務める松井秀喜氏(39)の2002年以来となる“古巣復帰”に周囲は盛り上がっているが、やはり注目すべきは初めてコーチ職に就くその指導ぶり。一体、どのようにして教えるのか。巨人側は松井氏の「腕」ではなく「足」に期待しているという。

 オーラが違った。1月31日、松井氏はチーム宿舎で行われたキャンプ前日の全体ミーティングに参加。ミーティングの冒頭で「12年ぶりにチームに入ります。プロ野球選手を教えたことはないですが、僕が経験したことを伝えられたらと思います」とナインの前で述べると、大きな拍手を浴びた。巨人で10年、そしてヤンキースなどメジャーリーグで10年。通算20年にわたって日米の球界でスター街道を歩んできたゴジラの風格は、やはり際立っていた。

 しかし指導者としての腕は未知数。どのようにGの後輩たちを教え、どのように育成していくのか。

 松井氏を古くから知る巨人球団関係者は、要望の意味も込めて次のように分析した。

「松井は初めてのコーチ業にヤル気を見せている半面で“自分はあくまでも臨時だから、選手よりも目立たないように”という一歩引いた姿勢も持っている。だが“どうなるかは分からない”というのが本音でしょう。たとえば指導をしていて、選手が何度言っても分からないようなことがある場合は“もっと、こうしろよ!”とか言いながらパシッといくこともあるかもしれない。球団も、そういう“まだ見ぬ松井”に期待しているところもある」

 口で言っても分からないならば「パシッといく」――。つまりは“愛のムチ”ということだ。だが、普段の松井氏は言うまでもなく温厚な性格の持ち主で、周囲の関係者が「これまでも怒っている姿を一度たりとも見せたことがない」と口を揃えるほどの人格者だ。そんな松井氏が若き日の星野監督ばりに鉄拳を繰り出すとはなかなか考えにくいが…。結論から言えば松井氏の場合は「オレが得意なのは足技」と豪語しているように「手」ではなく「足」が出るタイプ。そこで伝説技「ゴジラ・キック」が炸裂するのではないか、と古株の関係者の間で期待されているのだ。

 では「ゴジラ・キック」とはどういうキックなのか。簡単に言えば、後ろに振り上げた自分の右足を、回し蹴りのように相手の尻から太ももにかけてヒットさせるというもので、下手に逃げようとするとつま先部分がヒットしてしまうため逆に危険となる。いわゆる「タイキック」と酷似しており「松井は親しい関係者と談笑している際に“何なんだよ~”と苦笑いしながら蹴っていた。本人は冗談でも、これがなかなかの威力」という証言もある。軽いものでも、松井氏の体格から繰り出される超重量級の蹴り…。受ける方はたまったものではない。

 それだけに「松井が選手たちに“ゴジラ・キック”をバンバンと見舞えば気合が入ると思う」とひそかに注目されているというわけ。果たして「被弾第1号」となるのは誰なのか。このキャンプ、松井氏の“足”からも目が離せそうにない。