アストロズのカルロス・コレア内野手 いまだにを尾を引く「サイン盗み騒動」

2020年10月15日 14時00分

アストロズのコレア(ロイター=USA TODAY)

【元局アナ青池奈津子のメジャー通信=カルロス・コレア内野手(アストロズ)】バッシングを受けるのは、当然の報い…とは思う。

 ゴミ箱を叩いたりホイッスルを使ってのサイン盗みが暴かれたにもかかわらず、当事者の選手らは罰せられず、2017年のワールドシリーズのタイトルもそのままだったアストロズ。

 あのドジャースが敗れた瞬間のスタジアムでの失望感、喪失感、虚無感、無念…青いロサンゼルスの空が重い空気に覆われ、抜け出すのに数日はかかったのを覚えているので、対戦していた選手ら、真面目に野球している選手らの悔しさや怒りのコメントは理解できる。

 しかしまあ、今回のチャンピオンシップシリーズに進んだアストロズに対する米ライターたちのコメントの辛辣さよ。

「プレーオフを勝ち進む彼ら(アストロズ)を見るのは不愉快」「ALCSレイズ戦に向けての態度がおぞましい」「ワールドシリーズでドジャースとアストロズが対戦するかもしれないという疎ましい可能性」「アストロズにまた負けるなんて考えただけでもドジャースファンには耐えがたい」

 第1ラウンドで勝利した時のカルロス・コレアのこのコメントも悪いかもしれない。

「多くの人が怒っているだろう。多くの人が僕らがここ(ポストシーズン)にいるのを見たくないだろうけど、これで僕らに何が言える?」

 昨年のカルロスとのインタビューを書こうといろいろ調べていたら、世間はこの話題で持ちきりで、興味深さの半面、正直、気の毒にも思えてしまった。

「僕は野球選手になったら自分の言葉で話せるよう、通訳を使わなくていいよう、バイリンガルの学校に通わせてほしいって両親に頼んだんだ。小学3年生の僕の言葉を真剣に捉え、貧乏でいろいろきついのに、野球に加えて通わせてくれたことを本当に感謝している」

 今季、メディアに囲まれればサイン盗みのことばかり。それに答えるために英語の勉強を頑張ったわけではないだろうに…。

 カルロスは、プエルトリコ南の海岸に位置するサンタ・イザベルにある小さな漁村の出身。1998年、ハリケーン・ジョージの被害に遭い、両親は様々な仕事を掛け持つように。

「なんとか食事できるくらいに、両親ともいろんな仕事をしてくれた。父の建設工事の仕事にはついていって手伝ったりもしたよ。中学の時に実際に働いて給料をもらったんだけど、そのつらさにこれを一生やるなんて無理だって、より野球に身を入れるようになった。それが父の狙いだったんだけどね。決してここまで簡単じゃなかった。多くの犠牲を払い、クレージーなこともして、できる限りスカウトに見てもらえる試合に出たり。僕ら家族は、ドラフト1位指名の時にも、大リーグのデビューの時にもすごくエモーショナルだったよ。ようやくここまでこれたんだって」

 カルロスはいわゆるパーティーや飲み会に行ったことがないらしい。ワインやシャンパンは過去に数えられる程度、祝いの席で口にすることはあってもビールは飲んだことはない。

「大きなことを達成したかったら、そういうのはあきらめないと」

 そこまで律してきたのに…。経済的に苦しかったコレア一家のために、町の人が募金をし、遠征資金をかき集めてくれたこともあったそうだ。サイン盗みのスキャンダルは、世話になった人々の心にも大きく傷を残したに違いない。

 彼らの償いはこれから。真相がどうであれ、失った信頼を取り戻すには、これまで以上の何倍もの努力が必要だろう。何年かかっても取り戻せないかもしれない。その間、彼らにできることは何よりも野球を一生懸命プレーすること。その結果がドジャースとのワールドシリーズなら、見てみたいと思う。

 しかし、そうなったらメディアもこの街もすごいんだろうなあ…。

 ☆カルロス・コレア 1994年9月22日生まれ。26歳。プエルトリコ出身。右投げ右打ちの内野手。2012年のMLBドラフト全体1位でアストロズから指名され、プロ入り。15年6月にメジャーデビュー。以降、正遊撃手として定着し、同年99試合に出場して打率2割7分9厘、22本塁打、68打点、14盗塁で新人王に輝いた。16年は153試合、打率2割7分4厘、20本塁打、96打点と成績を伸ばし、17年は109試合、打率3割1分5厘、24本塁打、84打点。18年は打率2割3分9厘と成績を落とし、19年にはチームぐるみでのサイン盗み問題が発覚した。

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