【マサチューセッツ州ボストン発】新ポスティング制度を使ってメジャー移籍を目指す楽天・田中将大投手(25)は8日に緊急渡米。代理人のケーシー・クロース氏(50)とともにヤンキース、カブスなど複数の球団と接触する予定だ。明確な希望球団のない田中が移籍先を判断する“ツアー”という目的もある。いよいよ米球団による争奪戦が過熱するなか、一時は撤退の噂もあったドジャースが有力候補に再浮上してきた。

 楽天が新ポスティング制度による移籍を容認して米球団との交渉が解禁されてから13日。交渉期限の日本時間25日午前7時まで約2週間となったタイミングで田中が緊急渡米したことで、交渉は一気に進展する。

 田中は代理人のクロース氏とともに各球団の施設を見学しながら交渉を進める予定だ。これまで周囲は「本命はヤンキース」などと騒いでいたものの、田中本人に明確な希望球団はなかった。そこで今回の全米ツアーは各球団の条件だけでなく球場や施設、環境、気候などもチェックして、どこでプレーするのが最適かを決めることになる。田中を獲得したい各球団にとっても、プレゼン合戦の様相を呈しそうだ。

 この動きをいち早く察知したシカゴのコムキャスト・スポーツネット電子版が「田中がカブス、ホワイトソックスと今週会うようだ。場所はシカゴになる」と一報すると米メディアも続々と反応し、沈静化していた報道合戦も再開。そんななか、かつての“本命”ドジャースの動きに注目が集まっている。

 ロサンゼルス・タイムズの8日付電子版はド軍のコレッティGMがクロース氏と接触していたことを報じた。両者が話し合った日時などは明らかになっていないが、同紙によるとコレッティGMはド軍の番記者に対し、「彼ら(田中と代理人のクロース氏)は、多くの異なる街、市場、チームに関する情報、それにチームがどのようにして構築されているかなどを探っているところ。選手にとっても大きな決断になる。まあ、どこに行くことになるのか見ておくよ」と話したという。

 もともとド軍は資金力も豊富で、田中獲得については、当初からヤ軍との一騎打ちになるのではとささやかれていた。だが新ポスティング制度が締結して以降は「撤退説」が浮上。今回も同GMは田中獲得の意思を明確には示しておらず「どこに行くことになるのか」と発言しているが、獲得する意思がなければ、そもそも代理人と接触する必要はない。見方によっては、この人ごとのような発言こそが自信の表れのようにも映る。ド軍は先発投手陣がほぼ固まっており、田中が絶対に必要なヤ軍とはチーム状況が異なる。その一方で、エース左腕のカーショーなど複数の主力選手の代理人をクロース氏が務めており、ド軍との関係は密接だ。田中がド軍に強い関心を示した場合、やはり“本命”に再浮上しても不思議ではない。