ドジャースのアンドリュー・トールズ外野手 一流選手が路上生活で逮捕の衝撃

2020年07月09日 21時30分

マエケンの同僚としてもプレーしたトールズ(ロイター)

【元局アナ青池奈津子のメジャー通信=アンドリュー・トールズ外野手(ドジャース)】取材ノートに「カムバッカー。レイズを離脱、スーパーの冷凍食品売り場で働く。不安障害克服。ドジャースで一気に駆け上がる」と書いてある。

 先日、フロリダ州キーウエスト空港裏の路上で寝ているところを発見され、逮捕されたドジャースのアンドリュー・トールズのメモだ。

 分厚いひげが印象的だったアンドリュー。チーム内では「正直な性格が面白い」というポジションを確立したようだが、最初のころはよく一人でロッカーに座り、あまり誰とも話さず静かで集中している様子だったので、慣れてきたころに話しかけようと思っていた。いつの間にか見かけなくなったが、そのうちまた会えるものだろうと…。

 それが路上生活の上に逮捕だなんて…。一流選手の突然の転落人生にニュースの見出しが躍り、髪もひげも伸び放題で生気を欠いたアンドリューの逮捕写真が公開され、心が痛まずにはいられなかった。同時に「どうして?」との疑問が浮かんだ。

 数日後、USAトゥデー紙のボブ・ナイチンゲール記者によるご家族への取材記事で、その理由が明かされた。

 姉モーガンさんのこの言葉が胸に突き刺さる。

「一般の人は『え!? 逮捕されたの?』と驚いたかもしれないけど、私たち家族にとって逮捕写真は最大の喜びだった。彼が生きているか死んでいるかさえも分からなかったから」

 2018年オフ、ドジャー・スタジアムでトレーニングを続けていたアンドリューは、旅に出ると行ってふらっと出かけたまま戻らなかった。球団がいくら連絡を取ろうとしても、返事はないまま。年明けに家族の計らいで精神病院に入ったが、2週間で再び失踪。2月上旬にアリゾナ州の砂漠地帯の高速道路で、車両を事故り、ひどい脱水症状で歩いているところを警察に発見され、フェニックスの病院に搬送されたところで、家族はドジャースに助けを求めた。

 駆けつけたドジャースのメディカルディレクター、ロン・ポーターフィールド氏によると、アンドリューは自分がどうやってロサンゼルスからフェニックスにたどり着いたかも、自宅がどこかも分からなかったそうだ。

 19年のスプリングトレーニングにアンドリューは現れていない。球団は「個人的理由により欠席」とだけ伝えていたが、フェニックスで発見された後、裁判所の命令で4月半ばまで地区の施設に入院し、その後問題行動を扱う医療センターに入っていたのだ。アンドリューが診断されたのは「双極性障害」と「統合失調症」だった。

 過去に不安障害から、大学や最初に所属したレイズでもたびたび遅刻したり、プレーに精神的な影響を及ぼすなど問題を起こした経歴がある。頭の中で悪いことばかりが浮かんでしまい、それが積み重なると制御しきれなくなり、周りに迷惑をかけることを繰り返してきたが、レイズの球団関係者の助言で初めてカウンセリングに通い始めたところで変化が訪れる。

「助けを求めていいことも、助けを得たからっておかしなことじゃないということも、当時は知らなかった」とコメントするインタビュー記事があった。「もう助けなしでは難しいところまで達してしまっていたんだ」

 15年、アンドリューはいったん野球を辞めた。自身の不安症と向き合うために、アトランタのスカイランド・トレイルという精神施設に入ったのだ。