ツインズのランディ・ドブナック投手 ウーバードライバーからメジャーへ

2020年04月04日 11時00分

昨年は“シンデレラボーイ”として脚光を浴びたドブナック(ロイター=USA TODAY Sports)

【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】「昨日、初めて日本からファンレターをもらったんだ。あなたのストーリーが好きですって」

 ウーバーの運転手が大リーガーになったという話題を追って突撃した、メガネとヒゲがチャームポイントのランディ・ドブナック。2019年に一躍時の人になった彼は、すでに少し粋なおじさま風の趣がある人当たりの良い25歳で「『トモ』という娘さんのためにサインを送り返したよ」とうれしそうに会話を始めてくれた。

 その女性ファンは、ランディのどのストーリーが好きなのだろうか?

「ウーバーで5段階評価中4・99あるんだ。誰かが記事で4・9って言っていたけど、あれは間違い。僕は優良ドライバーなはず。チップとかも入れて時給は14ドルほどあったからね(ウーバードライバーをしていたペンシルベニア州の当時の最低時給は7・25ドル)」

 それともこの話だろうか?「大リーグに呼ばれた日、ミネソタの空港に着いたら、乗り継いだデトロイトに荷物が残っていて、次の便が来るまで1時間半、荷物が届くのを迎えに来てくれたドライバーと待っていたんだ。彼とはそれ以来のメル友で、デビューした時とか新年のあいさつでメッセージをくれるよ。必ず最後に『君のリモ(リムジン)ドライバー、クレッグより』って入っているんだ」

 あるいは昨季中にチームを抜け出し、9月28日に結婚したことだろうか?「だって、2年前に(結婚を)計画した時にはまさか大リーグにいるとは予想できなかったんだよ」。私個人としては、独立リーグでプレーした17年からのストーリーはセンセーショナルで好きだった。

 大学野球でそれなりの成績を挙げ、複数球団から書類提出を求められたが、実際にスカウトは一度も来たことはなく、期待したドラフトで指名されることもなかった。

「大学のコーチのツテでミシガン州のインディーチームに。1~2年は頑張ってみようと思ったら1か月ぐらいでツインズに拾われたんだよ」

 実はそこにも、ランディの投球を見に来たスカウトはいなかった。当時ツインズのマイナーチームは先発投手不足で、ベテランスカウト、ビリー・マイロス氏がランディの評判を聞きつけたものの、急ぎだったため動画投稿サイトの映像だけで決めたらしい。

 そこから2年足らずで19年8月に大リーグデビュー。同10月5日のヤンキースとの地区シリーズ第2戦の先発として田中将大と投げ合うなど夢にも思っていなかっただろう。個人的に印象的だったのが、一連の流れに対して、彼がとにかく平静だったということだ。

 大リーグへ昇格する日に荷物が遅れたら動揺しそうなものだが、フロントデスクでデトロイト空港に置き去りになっていると聞いても「ああ、OK」。19時開始の試合で30分前に球場入り。慌ててブルペンで準備をした時に、満員の観客を見て「ああ、いいな」と思ったそうだ。

 あまり感情を表に出さなくなったのは、リトルリーグ時代に思うところがあったからだという。「まだ打者もしていた小学生のころ、10本中3本打てればすごいことなんだって気づいた時から、野球は失敗が当たり前のスポーツだから、いちいち落ち込んでいたらやっていられないって理解したんだ。起きたことは変えられないんだって」

 メジャー初登板でも緊張はしなかった。「物事をできるだけシンプルに考えるようにしているんだ。観客は今までもより多いかもしれないけど、同じゲームを20年やってきたんだって」。数字が好きで、会計学の学位を持つランディらしいセリフだ。しかし、いつでも冷静なことで困ることもあるという。「感情を表に出さないことで、ときどき妻を怒らすんだ(笑い)」 

 ☆ランディ・ドブナック 1995年1月17日生まれ。ペンシルベニア州出身。右投げ右打ち。ウェストバージニア州のアルダーソン・ブローダス大学卒業後もドラフトで指名されず、独立リーグを経て2017年8月にドラフト外でツインズと契約。マイナー時代は自動車配車サービスのウーバーで運転手をするなど複数の副業を経験した。昨年8月9日のインディアンス戦でメジャーデビュー。9試合に登板して2勝1敗1セーブ、防御率1・59。ヤンキースとのア・リーグ地区シリーズ第2戦で先発の大役を託された。