コロナ長期化でWBCも影響必至

2020年03月23日 13時18分

【広瀬真徳 球界こぼれ話】前回の当コラムで通常開催を続けていた米メジャーリーグのオープン戦について警鐘を鳴らした。「少なくとも無観客に」という趣旨だったが、それからわずか2週間で状況は一変した。

 米大リーグ機構(MLB)は米国での新型コロナウイルスの感染拡大を受け日本時間14日、一斉に春季キャンプ、オープン戦全試合を中止に。シーズン開幕も延期することを発表した。先月末に日本球界が経験した状況そのものだが、MLBの決断は日本とは比べ物にならない速さだった。一斉中断による莫大な損失を被るにもかかわらずこの動き。「アスリートファースト」を標榜する米国ならではの迅速な対応だったと言える。

 とはいえ、このMLBの判断には一抹の不安も残る。来年3月に開催予定の第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に影響を及ぼす可能性があるからである。

 MLBは現時点で今シーズンの開幕を最低でも5月中旬以降に延期することを決め、今季予定されているシーズン162試合の短縮案も検討し始めている。この案通りなら来年3月のWBC開催に支障はないものの、今後米国でのコロナウイルス感染拡大に歯止めがかからなければシーズン開幕延期を即決したMLBのこと。管轄するWBCの開催延期、中止もあり得る。こうなると日本の野球人気が落ち込む可能性があるばかりかプロ野球選手の気概にも少なからず影響が及ぶ。

 実は球界で活躍する各球団の主力は東京五輪での金メダルよりWBCでの世界一に憧れを抱く選手が多い。2008年の北京五輪を最後に野球が五輪競技から除外された影響もあるのだろう。ある20代若手選手も先日「自国開催のオリンピックを直前に控えている中でこう言うのも何ですが…」と前置きしたうえでこう話していた。

「僕は東京五輪よりWBCで日本代表、世界一になりたい。おそらく僕ら世代はイチローさんたちが世界一に輝いた姿を見て『野球選手になりたい』と思った人が多いと思います。『五輪=野球』のイメージがあまりない。今野球をやっている子供たちもおそらく野球の世界大会はWBCと考えているはず。昨年、プレミア12で日本は世界一になりましたけど、あの大会はメジャーの一流選手が出場しなかったので『真の世界一』とは言いづらい。だとすると野球に限って言えば東京五輪よりWBCの延期、中断の方が影響が大きいと思いますよ」

 プロ野球の公式戦や東京五輪の開催是非が問われる中、WBCの話題は少し気が早いかもしれない。が、世界を狙う選手たちの視線は来春に向いている。
 サッカー界ではすでに6月中旬から予定されていたEURO2020、コパ・アメリカという大規模大会の1年延期を決めた。世界中で猛威を振るうコロナ禍はいつまで続くのか。スポーツ界の混乱は続くが、球界の今後のためにも何とかWBCまでには終息してもらいたい。

☆ひろせ・まさのり=1973年、愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心に、ゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。