憧れのドジャースから放出されて取り戻した本来の力

2019年08月03日 11時00分

今季はマーリンズでもプレーしたロモ(ロイター=USA TODAY Sports)

【元局アナ青池奈津子のメジャー通信=セルジオ・ロモ投手(ツインズ)】「あ、戻ってきた」

 ドジャー・スタジアムのマーリンズのロッカーで、ボソッとつぶやいた彼。何のことだろうと問うと、少しはにかみながら「実はさっき、後ろから『ハーイ』って声かけたんだよ。他のやつと話していたし、僕も声小さかったから…」

「えっ! それは気づかなくてごめんなさい…」って、ちょっと待って。

 私の知るセルジオ・ロモは、メキシカンらしい陽気さと少年のような無邪気さを備えた元気ウキウキな投手であって、そんなしおらしいキャラクターではない。加えて2017年ドジャースにいた数か月は投球に苦しんでいたし、どこか近寄り難く、話したこともない。

 あのころとは別人のセルジオに内心ものすごく驚いていたのだが、本人がご機嫌なのでここは旧友と会った感じで話をしてみる。

「もう一人、女性のリポーターいるでしょ? いつも仲良さそうにしてた。彼女は元気? 今回、ゲートをくぐるのにすごく緊張したんだ。ドジャースにリリースされてから初めてのドジャー・スタジアムで、どう受け入れられるか心配だった。でも、スタッフのみんなもメディアのみんなも変わらず親切に声かけてくれて、ホッとしたよ。まだ野球をさせてもらえることがすごくうれしい。これが大好きだから。もう終わりかもしれないと思っていたから。レイズのやつらと野球して深いつながりができて、チームを離れても応援しているんだ。ドジャースももちろんね。彼らは何をするにしても、勝っても負けてもうるさいからね。嫌でも耳に入ってきちゃうけどさ」

 導入こそ控えめだったが、この矢継ぎ早に楽しそうに話すセルジオこそ、本来の姿なのだろう。何かあったのかな、と感じていた私を察してか、急に真面目な顔になった。

「ドジャースに在籍していた時は、自分が自分じゃなかった。家族とか野球以外のことで頭がいっぱいで、いつもケータイをいじって、どこか壁をつくっていたよね。今は自分でも別人だと思う」

 メキシコとの境であるカリフォルニア州ブラウリー出身で、ジャイアンツ在籍時のドジャース戦には家族全員が(ジャイアンツの家族席で)ドジャースのユニホームを着て応援に来てしまうほどの大のドジャースファンとして育ったセルジオは、ドジャースの一員になれたことの喜びをプレッシャーにも変えてしまったと言う。頑張ろうと思えば思うほど空回りしてしまったこと、誰にでもあると思う。

「いろんな苦しいことをくぐり抜けた時、気がついたら野球への愛だけが明確に残っていたんだよ。やらせてもらえる限り続けたいって。そう思っていたら、こうしてドジャー・スタジアムに戻ってくる機会をもらえた」

「生まれてからずっとドジャースファンで、野球選手としてはなりたかったドジャースになれて人生のやりたいことリストの一つはクリアできたけど、できることなら…。ドジャースではやり残した仕事があるような気がしているんだ。だから僕はまだ投げられるってアピールしていくことにしたよ」

 一皮むけた人のエネルギーとはこんなにも気持ちのいいものなのか。この数分の会話でセルジオの笑顔が移ってしまったのか、この日は一日中いろんな人から「今日、楽しそうだね」と声をかけられた。 

 ☆セルジオ・ロモ 1983年3月4日生まれ。36歳。米国カリフォルニア州出身。177センチ、83キロ。右投げ右打ちの投手。2005年のMLBドラフト28巡目(全体852位)でジャイアンツから指名されプロ入り。08年にメジャーデビュー。10年にはセットアッパーとしてチームの世界一に貢献した。13年の第3回WBCにメキシコ代表として出場。同年はオールスター戦にも出場した。17年にドジャースに移籍するも同年中にトレードでレイズへ。18年に2試合連続で先発するなど、オープナーとして注目を集めた。19年からマーリンズでプレーしていたが、27日(日本時間28日)に電撃トレードでツインズに移籍した。