今思い出しても笑ってしまう…ラステラ内野手の逆質問

2019年07月13日 11時00分

今季好調のラステラだったが自打球で骨折、戦線離脱している(ロイター=USA TODAY Sports)

【元局アナ青池奈津子のメジャー通信=トミー・ラステラ内野手(エンゼルス)「あれちょっと待って、これもしかして全部僕の話になるの?」 

 キョトンとした顔でインタビュー中に逆質問してきたトミー・ラステラのあの驚いた表情を、私は3か月近くたった今思い出しても笑ってしまう。

 4月半ばのエンゼルスのクラブハウス。その時は確かに主力選手はおのおののルーティンをこなしているのか、部屋に話をできる選手がトミーしかいないにもかかわらず、記者たちはそれぞれが目当ての選手を待って立っているだけで彼はがら空きだった。

「趣味? 家族と友人とただ過ごすのが好きだよ。野球が1年の大半を占めてしまうから、オフは午前中トレーニングしたら午後は彼らとゆっくり過ごす以外したいことない。あとは卓球だったり、兄とは釣りに行く機会を常に狙っているよ」

 はにかみながら、イメージよりも低く芯のある声で話すトミーは、確かに少しシャイな印象があった。

「幼いころから、父や兄や友人たちと野球の試合を見るのが大好きで、外に出てはテレビで見た選手のフリやまねをして遊んでいた。デレク・ジーターが大好きで。3つ上の兄とその友達とばかり一緒にいて野球をやっていたから、小さいころはほとんど負けるしかなかったんだけど、おかげで必死に頑張るようになったと思う」

 当時、ラステラ家の地下にはピッチングマシンが設置されており、好きなだけ打撃練習ができたのだとか。壁には強打した球の跡が今も残っているそうで、トミーの打撃の原点だ。

「選手になる夢が現実味を帯びてきたのは大学2年以降かな。チームメートたちがドラフトされていたから、自分もスカウトたちの目に映る機会をもらえた。そういえば金属バットからプロで木製に変える時は苦労したな…って、ちょっと待って、これ全部僕の話?」

 ここまで来ての問いに私も不意を突かれ「え? もちろん、そうだよ。どうして?」と返すと「あ、うん。大丈夫。うん」と急に声が小さくなった。

 注目されるのは苦手なのだそうだ。「苦手な理由は特にないんだけどね」と笑うトミー。

「でも大丈夫だよ。実際にその選手の裏側にある旦那、父、兄弟、息子としての顔を見せられるわけで、ただ野球やってるだけじゃないところを知ってもらうのはいいことだと思う。ファンの人たちが応援している選手のことを知りたいって思うのは当然だしね」

 本当は高校時代に野球を辞め、ロバの餌やりアルバイトの話を聞きたかったのだが、ここは焦らずに時間をかけようと思った。

 この後、トミーのキャリア一大ブレークが始まる。当然、取材対応も増えるので話すチャンスは激減。その活躍は自身初のオールスター戦にも選ばれるほどだった。

「話すのは苦手だけど、ファンの前でのプレーは平気だよ。それこそが、子供時代に夢見たこと。庭で野球しながら、いつかヤンキー・スタジアムでホームランが打てたらって。ファンの熱気こそが楽しみを大きくしてくれていて、大人になった今もそういう瞬間、あの空気感を求めている。チケットが売り切れ満員のスタジアムで、全力でプレーし、活躍することへの欲求が自分を駆り立てていると思う」

 そのトミーは先週、自打球の右すねへの当たりが悪く、全治8~10週間のけがを負い、オールスター戦を辞退した。どんなに悔しかったか、計り知れない。エンゼルスのオースマス監督が、松葉づえで邪魔になるからと遠慮するトミーに催しだけでも参加すべきだとトミーを説得中だという。

 今年、オールスター戦のパレードで一番見たい人物を聞かれたら、私は間違いなくトミー・ラステラと答える。 

 ☆トミー・ラステラ 1989年1月30日生まれ。30歳。米国ニュージャージー州出身。右投げ左打ちの内野手。2011年のMLBドラフト8巡目(全体266位)でブレーブスから指名されプロ入り。14年5月にメジャーデビュー。同年は93試合に出場し、2割5分1厘、1本塁打、31打点。オフにカブスへ移籍し、4シーズン主に控え内野手としてプレー。18年オフにエンゼルスへ移籍した。180センチ、83キロ。