実はメジャーに多かった イチローの現役続行を願う人々

2019年04月06日 11時00分

開幕カード後、引退会見に臨んだイチロー

【広瀬真徳 球界こぼれ話】先月末、現役を引退したイチローの話題が尽きない。3月22日未明の電撃引退会見から10日以上がたった今もテレビや新聞、雑誌、ネット等ではイチローの文字が躍る。長年にわたり日米球界をけん引してきた英雄的存在。ねぎらいの意味合いを含め注目されるのは当然だろう。だが、その引退劇の舞台裏では意外なほどイチローに対し現役続行を願う声が多かったことをご存じだろうか。

 たとえばアスレチックスの球団社長特別補佐でメジャー通算盗塁記録を保持するリッキー・ヘンダーソン(60)は、開幕シリーズ第1戦の試合前打撃練習で鋭い打球を連発するイチローを見ながら真顔でこうつぶやいていた。
「40代半ばでこれほどの鋭い打球を打てる打者が他にいるだろうか。私が見る限り、守備、走塁面も問題はない。メジャーでプレーできなければ日本や米独立リーグでもいい。日本には彼を受け入れるチームがあるだろ? それなら現役を続けるべきじゃないか。私はできる限りプレーしたかったが、その場がなかった。だから40代半ばで引退しなければならなかった。イチローは違う。野球への情熱、愛情さえあれば彼は安打数を含め、記録を伸ばすことができる環境がある。その可能性を自ら閉ざす必要はない」

 2004年のマリナーズ一塁ベースコーチでイチローと親交のあるマイク・アルドレッティ(58=現アスレチックスコーチ)も現役続行を前提にこう熱弁していた。
「彼が40歳を超えた現在でもメジャーレベルの選手であることに疑いはない。そうでなければ、真剣勝負のこの舞台(日本開幕シリーズ)には立てない。個人的には50歳と言わず60歳になってもイチローにはプレーを続けてもらいたい。これは冗談ではなく、彼はまだその実力を持ち合わせている。君たちメディアや日本のファンもそう願い続けるべきじゃないか」

 いずれも引退発表前に聞いた話である。日本では開幕前からイチローに対し「限界説」が多数を占める中、メジャー関係者からは「プレーする環境がある限り続けるべき」と現役続行を促す声がやまなかったのである。

 今春キャンプ、オープン戦や日本開幕シリーズでの成績を見れば確かにイチローの衰えは否めない。本人自身、そう感じたからこそ潔く身を引いたはず。それでもイチローをよく知る元プロ野球選手も「仮に今季日本のチームでプレーしていれば少なくともレギュラークラスの活躍はできたはず」と太鼓判を押していた。

 先週末に日本のプロ野球が開幕。今さらイチローの復帰を語るのはやぼかもしれない。ただ、もし今季日本でプレーしていたら日米通算成績をどこまで伸ばせていたのか。そんな期待を抱かせるのもまたイチローの才器なのかもしれない。

 ☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心に、ゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。

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