【ニューヨーク28日(日本時間29日)発】ヤンキースの田中将大投手(30)が、開幕戦初勝利を挙げた。本拠地オリオールズ戦に先発し、5回2/3を6安打2失点(自責点1)、5三振無四球の好投。打線の援護、救援陣の好投もあってチームは7―2で完勝。日本人投手最多の4度目の大役でついに初白星を手にした。その自己評価は――。

 田中らしい試合後のコメントだった。メジャーでは4度目、楽天時代を合わせると5度目の開幕投手でようやくつかんだ開幕戦勝利を「一つ成長した姿を見せられたとは思います。これまで勝ってなかったですから。これまでいろいろなことがあって、それを自分の糧としてやれてきたからこそだと思います」と冷静に振り返った。特別な勝利か、の問いには「勝ったことはもちろん良かったですよ。でもなんか『やったー』とかはないですね。正直なところ。納得いかない部分はいっぱいありますけど」。さっそく反省が口をついた。

 初回、二死から2安打されながらも無失点に切り抜けると、味方打線が3点を奪った直後の2回には三者連続空振り三振。3回も一死後、9番・マーティンには92マイル(約148キロ)の直球で空振り三振。1番・ムリンスをこの日最速の93マイル(約150キロ)の直球で遊ゴロに打ち取った。

 立ち上がりから変化球が低めに決まり、真っすぐも走っていた。調子良く見えたが、右腕は「『今日はこのボールでストライクを確実に取れる』というボールがなかったんで、少し窮屈さ、難しさというものは感じながら投げてました」。満足とはほど遠かった。

 4回は二死後、マンシーニの三塁内野安打から三塁手の悪送球が絡み、初めて走者を二塁に背負った。続くルイーズには真ん中へ入ったスライダーを中前に転がされ1点を失った。しかし、6番・リカードは低めのスライダーで力のない中飛に打ち取った。

 5回を三者凡退に片付けて迎えた6回。一死後、2番・スミスに真ん中に入ったカーブを捉えられ、右翼フェンス直撃を許したが右翼・ジャッジの好守で単打。続くビラーは外角スプリットで一ゴロに仕留めたが、走者は二進。マンシーニに落ちきらなかったスプリットをすくわれ中越え二塁打され、2点目を失った。ここで投球数は83。ブーン監督に交代を告げられると、スタンドからは拍手が沸き上がった。

 苦しみながらも、相手に隙を見せない貫禄の勝利。そのメンタル、自己修正力はもがき苦しんだ2017年シーズンがあったからこそ。エースのセベリーノの負傷で回ってきた大役だったが、「こうしてまた開幕のマウンドに上がることができたっていうことは誇りには思いたいですね」と胸を張った。

「何がともあれ勝ったし、ゲームしっかりつくれたと思うんで、反省するところはもちろんありますけど、良かったものは良かったです。反省するところは反省して、次につなげられるようにとは思います」。日本時間29日はまい夫人の誕生日。最高のプレゼントだ。幸先良くスタートしたメジャー6年目。悲願の世界一へ進む。