菊池雄星を変えた助っ人左腕の金言

2019年03月20日 11時00分

プレシーズンマッチで再会した炭谷(右)と菊池

 岩手・花巻東時代に具体化しかけていた夢を一時封印してから10年。マリナーズ・菊池雄星投手(27)のメジャーデビューが目前に迫っている。西武では2016年から3年連続で2桁勝利を挙げ、昨季は10年ぶりのリーグ優勝にも貢献した。その実績もさることながら、夢だった世界の舞台へと羽ばたけたのはこの男の功績も大きい。元正妻で、オフに西武から巨人にFA移籍した炭谷銀仁朗捕手(31)が菊池の“アナザーストーリー”を明かした。

 東京ドームで行われる開幕アスレチックス戦の2戦目(21日)でメジャー初先発する菊池は、17日からの巨人とのプレシーズンゲームに帯同。18日はブルペンで投球練習し、本番に備えた。直球にカーブ、スライダー、チェンジアップを計30球投じ、クイック投法も入念に確認。調子について聞かれると「いい感じです」と笑顔を浮かべ、グラウンドではマリナーズOBでもある佐々木主浩氏(51)から激励される場面もあった。

 その左腕に特別な視線を送っているのが炭谷だ。グラウンドでの久々の再会を喜び「(西武時代は)本当に激しく言い合った。アイツの場合は、考え方が一個でした」としみじみ振り返った。

 鳴り物入りでプロ入りした左腕が壁にぶち当たったのが、5勝(11敗)に終わった5年目の2014年。翌15年も9勝10敗と負け越し、炭谷とは何度も激論を交わしたという。改善のヒントとなったのは、違うリーグに所属する助っ人左腕が発したポリシーだった。

「左で150キロ以上の球を投げる広島のジョンソンが『俺は三振を狙っていない。ゴロを打たせるのが最優先だ』と言っていた。雄星に『お前、もしかしたら全部が全部、三振狙ってないか?』と聞いたら『はい。僕は三振を狙える球を持っています。三振を取ればエラーは起きないじゃないですか』と言ったんです」(炭谷)

 27個のアウトすべてを三振で奪うのは、確かに理想かもしれない。しかし現実的ではない。炭谷は「一理あるよ」と“投手的”な発想に理解を示してから「一人で野球をやるなよ」とエース左腕を諭した。

「その考えだと野手との相乗効果は生まれない。野手も雄星が投げている姿を見ている。援護とか生まれにくい。『ここぞというところで三振を取れるのが、すごい投手。楽天の則本(昂)も全部(三振を)狙っているわけじゃない』って言ったら、そこから雄星も変わった」

 野手を信じ、打たせて取ることを覚えた菊池は16年から12勝、16勝と白星を重ね、昨季は14勝を挙げて西武を10年ぶりのリーグ優勝に導き、世界へ旅立った。

 菊池はキャンプでの3度のオープン戦登板と、来日直前の紅白戦を経て「ボールの軌道が出ているかどうかが大事。日本のいい時と同じ軌道は出てきている」と好感触は得ている。16日夜には同僚らにすしを振る舞い、サービス監督は「とてもチームに大事なこと。時間を一緒に過ごして理解を深めることができる」と感謝していた。

 日本でのメジャー初登板は日本勢では初。8年間、コンビを組んだ先輩捕手は誰よりもメジャー初勝利を心待ちにしている。