【元局アナ 青池奈津子のメジャーオフ通信=トッド・フレージャー外野手(メッツ)】「あなた、まだトッドと話していないの? 彼、素晴らしいわよ!」。声の主はメディア仲間で恐らくロサンゼルス一ナイスバディーなクラーディア・ゲストロ。英語とスペイン語を駆使し、一人でカメラもインタビューもリポートも編集もこなす彼女が「インタビューで毎回感激する!」と絶賛したのが、トッド・フレージャーだった。

 その日は、こんな話をしていた。前日の試合でファウルボールを追いかけて客席に飛び込んで捕球。ボールの入ったグラブを掲げて、審判がアウトを宣告した。しかし、実際にグラブに入っていたのは、倒れながら目の前にあったファンのお土産用ゴムボールをとっさにつかんだものだった。

「とにかく何かつかんで早く立ち上がらなければって、目の前の白いボールをつかんだんだ。審判に見せたあと触れたら、こりゃ違うじゃんって。その瞬間、スタンドで正規のボールを指さすファンの姿も見えたから、ボールをさっさとスタンドに投げたんだ。あまりにうまく誤魔化せたもんだからダッグアウトでニヤケが止まらなくて」

 実際には“グレーなプレー”ながら、得意げに語るトッドには全く嫌みがなく、終始笑いが起きていた。途中で選手らから入れられるちゃちゃも軽快にかわす。その流れで待っていた私に「やあ!」と声をかけてきた。まるでハイスクールで同級生に接するように。「僕はシンプル。ニュージャージー出身、兄が2人、ありとあらゆるスポーツをやって育った。両親ともに教育関連の仕事」。インタビューの趣旨を説明しただけで、あとは相づちを打つだけで会話が進む。

「実はさ、父親が自分の高校の校長だったんだ。よく『げ、それって最悪じゃない?』って言われるけど、全然! 父親とは仲良かったし、基本的に他のみんなと変わらない扱いだった。歴史の授業が嫌いでたまに校長室で時間を潰してたんだけど、行くと『歴史の授業なんだろ?』って笑われて30分ぐらいしたら『そろそろ戻っとけ』って。イケてるでしょ? まあ自分も宿題や成績はちゃんとしていたから、そんなに心配もしていなかったみたい」

 楽しさを伝染させるのがうまい人だと感じた。勉強もスポーツもできるのにおごっていないクラスの人気者…と言ったらイメージが湧くだろうか?「両親の教育のおかげかな。昔から愛想がいいんだ。でも、たまにクレージーで結構エモーショナル。野球というゲームが大好きだけど、それ以上にファミリーを愛している。それが趣味といえるなら、僕はファミリーガイが趣味だね」

 そのトッドが特に楽しみにしているのが「大みそかパーティー」だそうだ。「80~90人ぐらいを自宅に呼んで、レストランさながらの食事やゲームにカウントダウンするんだ。子供たちはベビーシッターに預けてね。昨年のテーマはフォーマル。男性はスリーピーススーツ、女性はロングドレス着用で舞踏会さながらだったよ! これが本当に楽しくて、みんなからも好評なんだ」

 十数年ぶりに日本で紅白歌合戦を見ながら年越しすることを楽しみしている私とはスケールがだいぶ違う。想像するだけでも華やかな気持ちにさせてくれたトッドで今年を締めくくりたい。みなさま、良いお年を!

 トッド・フレージャー 1986年2月12日生まれ。32歳。ニュージャージー州ポイントプレザント出身。190センチ、97キロ。右投げ右打ち。2007年のドラフト1巡目に指名されたレッズに入団。11年5月23日のフィリーズ戦でメジャーデビュー。13年のシーズン途中から正三塁手となり、14年には29本塁打、20盗塁と「20本塁打、20盗塁」を達成。15年にはオールスター戦のホームランダービーで優勝し、ホワイトソックスに移籍した16年には40本塁打を記録するなどメジャーを代表する長距離砲。17年7月にヤンキースにトレード移籍。18年2月にメッツと2年契約。