巨人が8日、東京ドームでの大リーグ選抜戦に6―9で敗れた。試合そっちのけで注目を集めたのは復帰後初采配となった原辰徳監督(60)と大リーグ選抜の一塁コーチを務めた松井秀喜氏(44=ヤンキースGM特別アドバイザー)。近い将来の巨人監督就任を待望される松井氏は、原監督の下でのコーチ入閣、そして“監督禅譲”までささやかれており、そのタイミングが今から注目されている。

 試合に敗れはしたが、攻撃陣は売り出し中の松原がランニング3点本塁打を放つなど相手を上回る12安打を記録。若手の躍動に指揮官の表情は明るかった。第1次政権時と同じ背番号83のユニホームで再びタクトを振った原監督は「非常に新鮮な形で東京ドームで采配を振ったつもり。緊張感がありましたし、選手とベンチが一体となって戦っているな、というものを感じました」と充実感をにじませた。

 ただこの日はあくまでエキシビションマッチ。主役はやはり巨人のレジェンドコンビだった。試合前、原監督が巨人の練習を見守っていると三塁側からMLBのベースコーチを務める松井氏が登場。ヤンキースのユニホーム姿にスタンドから歓声が上がるなか、打撃ケージ裏でしばしの“ビッグ対談”が始まった。

 気になる会話の内容について、原監督は「今日は一塁コーチとして立つということだったので『ちょっと時間があるなら、こっちのベンチに戻ってきていいんだよ』と冗談は言いました」とニヤリとしながら一部を明かしたが、G党が松井氏に望むのも巨人のユニホームを着て一塁側ベンチに立つ姿だろう。

 巨人としても、松井氏さえその気になれば常に門戸は開いているのだが、監督就任を要請するたびに断られ続けている。では、どうすればゴジラは首を縦に振ってくれるのか――。球団は今回の監督交代劇を巡っても頭を悩ませたようだ。

「松井が後輩の由伸から直接バトンを受けることはあり得ない。じゃあ、誰の後なら引き受けてもらえるのか、ということですよね。原さんにチームを立て直してもらい、松井にはコーチとしての復帰を粘り強く要請し続けようと。すでに監督として実績十分の原さんであれば、3度目の今回は“つなぎ”の役目を理解してくれるはず。次こそは“禅譲”という形で松井につなぎたい、というのが最高の青写真です」(巨人関係者)

 だが松井氏は今もヤンキースのGM特別アドバイザーという職に就いており、生活の拠点はニューヨーク。日本に戻ろうという空気はみじんも感じられない。「もちろん球団としては松井が帰ってこないケースも想定しないといけない。その場合、もう一人の候補は阿部です。同じく禅譲路線を敷くために、帝王学を叩き込むのは師弟関係でつながる原さんが適任ということでしょう」(同)

 原監督への直訴で捕手復帰が決まった阿部だが、故障悪化のリスクを押しての決断は現役生活の終わりを意識しているからでもある。一方で指揮官が快諾したのも、その覚悟の重さを理解してのことだろう。近い将来、阿部が原政権下で指導者としての道を歩み始める可能性は高い。

 球団が今回、原監督に託した時間は3年。その間に巨人の未来は開けるのか。カリスマ指揮官は重い任務を背負って船出した。