昨シーズン中に父の脳腫瘍が発覚 日帰りでも故郷フロリダに向かう日々

2018年08月25日 16時30分

強打でチームを支えるカステラノス(ロイター=USA TODAY Sportss)
元局アナ 青池奈津子「メジャー通信」

【ニック・カステラノス内野手(タイガース)】脳腫瘍が見つかった父は迷惑をかけまいと、なかなか息子に言わず、その息子も不安を誰にも言わずに耐えながら、野球をしていた。

 ニック・カステラノス。野球帽をかぶると濃いひげがさらに際立ち、なぜか濃いけど爽やかで、渋いのに清潔感がある独特な雰囲気を持っている。「父がキューバ人で、母はドイツ、フランス、ネーティブアメリカン、ポーランドと、いろんな血が混ざっている」というが、私自身は目元が和風だという考えを捨て切れない。

「趣味は子供と過ごす時間、フォトグラフィー、それから昨オフに母からピアノをもらったから、今オフはレッスンを受ける予定。ピアノは自分でリクエストしたんだ。人生ずっと野球ばかりしてきて、楽器一つ触れたことがなく、人が弾いているのを見て、僕もできたらなって。だったら、やってみようって。目標は、思うがまま自由に弾けるようになること。アンビシャス(野心的)? そうだね。でも5歳で大リーガーになりたいっていうのも、すごくアンビシャスだけど、なんとかここまでこられたから、一歩一歩やれば僕の右脳も鍛えられるんじゃないかと」

 小学校から私立校に通い、放課後には打撃コーチの個人レッスンを受けるほどの野球一色な英才教育を受けていたという彼は、話し方もスムーズで、話題も豊富だった。

 その中でも特に出てくるのが、父ホルヘさんの話。

「5歳のころから大リーガーになることが僕自身の夢だったけど、両親、特に父が僕を大リーガーにしようと、僕と弟(ライアンも昨年までタイガース傘下のマイナーチームでプレー)が常に練習か試合をしているようにこだわったんだ。もちろん、けんかもしたよ。『もういい、やめる!』って、けんかした回数なんて数え切れないもん。まぁでも、やめさせてくれるような人じゃないんだ。そうやって嫌な時でも背中をプッシュし続けてくれたから、今の自分がいるのは間違いない」

 こうして今、ホルヘさんの話をするニックの表情は、とても優しい。

 しかし、昨年のシーズン中は誰にも言えない大きな悩みを抱えていた。ホルヘさんに中枢神経系リンパ腫という脳腫瘍が見つかり、両親が離婚しているため長男として手術や治療法などの決断を下さなければならなかったのだ。昨シーズン中、オフがあれば、どこからでもフロリダの父の元に飛んで行って、日帰りでも野球に戻ったというニック。

「自分が真っ二つに割れたみたいだった。肉体的には野球場で準備をしているのに、精神的には州をいくつも隔てたところにあった」

 実は、自身も呼吸器科医であるホルヘさんは、自分で病気を判明させようとなかなか他の医師に診てもらうことをせず、ようやく息子に伝えた時には、かなり遅くなってからだった。これも状況を悪くした。

「僕らに心配をかけまいと、なかなか明かさなかったんだ。僕はすごく怒りを感じたし、傷ついた」

 そうして迎えた昨年8月21日、ホルヘさんの術後の経過がよく、寛解期を迎えたという知らせが届いた。その翌日のヤンキース戦で、ニックは本塁打を2本放ち、その日からシーズン終了まで打率が3割5分6厘だったそうだから、精神的安心が与える影響は本当に大きい。

「毎日野球するのが楽しみ」。また一つ大きな壁を乗り越えたニックは今、タイガースのリーダー的存在にもなっている。

 最近タイガースのポッドキャストができた。そこで実に軽快に話すニックの声を、機会があったらぜひ聴いてみてほしい。

 ☆ニック・カステラノス 1992年3月4日生まれ。26歳。米国・フロリダ州出身。2010年のMLBドラフトでタイガースから1巡目(全体44位)指名を受けてプロ入り。13年9月にメジャー初昇格。11試合に出場すると、翌14年からメジャーに定着。同年は三塁手として148試合に出場し、打率2割5分9厘、11本塁打、66打点の成績を残した。昨季はキャリアハイの26本塁打、101打点をマークし、打率も2割7分2厘と確実性が増した。193センチ、95キロ。右投げ右打ち。

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