野球、アメフットと”三刀流” 合唱隊での忘れられない時間

2018年07月28日 11時05分

長打力が持ち味のシュワバー(ロイター=USA TODAY Sports)
元局アナ 青池奈津子「メジャー通信」

 クラブハウスに行くと、大音量のサルサやレゲトン音楽に合わせてノリノリで踊っているラテン系の選手に出くわすことがある。何なら「君もジョインして」と言わんばかりなので、歌って踊れるラテン系の選手がいてもまったく驚かない。

 でも、183センチ、100キロを超える白人に、元アメフットのラインバッカーとショークワイア(合唱隊)の組み合わせはとても意外だった。

 カイル・シュワバーは高校時代、春夏は野球選手、秋はアメフット選手で、冬にはシンガーダンサーという3つの顔を持っていた。

「あはは」と、低音の響く、見た目とはギャップのある柔らかな声で少し照れながら応じてくれたカイルは、何かとよく笑う。

「高校のエキストラカリキュラムの一つで単位がもらえたんだよ。友人のお母さんが監督だったし、他の勉強をする授業を取るよりかは歌う方が楽しいかって。コンテストに出たり、いろんな町に行けたり、実際すごく楽しかった」

 趣味は、釣り、狩猟、ゴルフ。オハイオ州(つまり田舎)出身で、「幼少期はサッカーもバスケもスポーツなら何でも一度はやってみる、とにかく外にばかりいる子供だった」と、近年細身の野球選手も増えている中、大柄でいかにも「ザ・アメリカのアスリート」を絵に描いたような彼。

 アメリカのショークワイアといえば、歌いながら揃ったダンスパフォーマンスが見ものの、まさにエンターテインメントショー。まず歌のうまいソリストが出てきて場の空気をつくり上げ、それぞれのパートがハモり踊りながら盛り上げる。カイルはベース。授業とはいえ、オーディションを突破した男女それぞれ25人だけが参加できるグループだ。

「結構たくさんのアメフット選手が参加していたんだよ」とカイルは言うが、インターネット上に残っている当時の「パープル・ピザーズ」(所属グループ名)の映像を見ると、ひときわ図体の大きな彼はよく目立つ。

「僕は決してうまい方じゃなかった。ステップも苦手だったし。一度さ、審査員に指摘されたことがあるんだよ。コンテストの中に、審査員から直接批評を受けるものがあるんだけど、個人的に呼ばれて『君、もっとシャープじゃないとダメだよ。もっと振り付けを覚えなきゃ』って。僕がステップをミスしたショーの一つなんだけど、恥ずかしかったー!」

 私が見た動画では薄紫色のシャツ、白のスーツにピンク色のネクタイをしたカイルがセンターでキレのあるダンスを披露していたから、よほど練習したのだろう。結局卒業するまで3年間在籍し、成績は「A」だったそう。

「クワイアの良いところは、パートごとに歌うところ。僕がいたグループには素晴らしいソリストがたくさんいて、彼らに合わせて僕らがリズムをつくれば良いから、最初は難しいけど、覚えてしまえば、あとは流れに任せるだけ。アスリートも音楽バカもガリ勉もいて、もう一つのファミリー。互いに支え合って舞台を作った。コンテスト以外にも地元の養護施設に行って披露したり。一生忘れない時間だよ」

 カイルのクワイアでの一番の曲はサイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」だそうだ。ちなみに野球とのつながりは?と聞いた。
「あまりないかな」と笑いながら言った後で「どちらも高い競争性があるね。あとは、居心地が悪い瞬間こそが気持ちいい瞬間になってくる。緊張していたり、調子が悪かったり、ベストでない日は当然あるけど、それでも舞台にも、野球の打席にも立たなきゃならない。そして、友情と絆。かけがえのないファミリー」。

 それにしてもすてきな声。今は一人カラオケを楽しむだけだなんて、少し残念だ。

 カイル・シュワバー 1993年3月5日生まれ。米オハイオ州ミドルタウン出身。2014年のドラフトでカブスから1巡目(全体4位)指名。15年にメジャー昇格を果たし、主に左翼手や捕手として69試合に出場。16本塁打、43打点、打率2割4分6厘の成績を残すと、ポストシーズンでも新人ながら5本塁打を放つなど活躍した。16年はけがで2試合出場にとどまったが、ワールドシリーズで復帰。第1戦から5番・DHで出場した。17年は左翼手のレギュラーに定着。129試合に出場して30本塁打、59打点、打率2割1分1厘。

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