ソフトB・内川の凄さは「崩されてから打てる打撃」

2018年05月16日 11時00分

9日の西武戦で2000安打を達成した内川

【赤ペン!赤坂英一】プロ野球史上51人目の2000安打達成者、ソフトバンク・内川聖一は、自他ともに認めるチームリーダーである。いつも若手の手本となるプレーや態度に徹し、マスコミへの取材対応も実に懇切丁寧。人格的には51人中一番に近い、と言っては持ち上げ過ぎだろうか。

 さらに、打撃の技術に関しても、51人中唯一と言っていい独特の感覚とセンスの持ち主である。

「ぼく、大体3種類から5種類のバットを使ってます。形も芯の位置も、全部違うんですよ。どれを使っても打てないときは、ほかの選手にバットを借りたりもしますね。実際、2011年の日本シリーズでは、ヒット7本のうち3本を今宮のバットで打ちましたから」

 私が内川にそんな話を聞いたのは、最多安打(157)のタイトルを獲得した12年。まだ安打数が1300台ぐらいのことだった。変わっていると言われないかと聞くと「ああ、それはよく言われるんですが」と、こんな答えが返ってきた。

「打撃は最もいい打ち方を追求するものだから、長いことやってればだんだんフォームが固まってくるし、バットも1種類に決まってくる。それが普通ですよ。でも、ぼくの場合、そういう自分の形を崩されたときにどう打つか、が自分の打撃だと思っていますから」
 
だから、打てないときに「まあいいや」と思い、単なる習慣で同じバットを使う自分が許せない、と内川は言う。「バットを変えて打つのはぼくにとってむしろ当たり前」と強調していたものだ。

 ちなみに、そんな内川の特長を早くから見極めていた投手が、楽天時代の田中(現ヤンキース)だった。「どんなに体勢を崩されても、しっかり自分のタイミングで捉えられる。しかも右方向へも打てるし、左へも引っ張れるのがすごい」と、内川の技術に感嘆。内川の言う「自分の形を崩されてから打てる打撃」を投手目線で見ると、それほど脅威に映るのかと、改めて得心させられた。

 思い出深い内川の言葉をもう一つ。11年を最後に日本ハムから大リーグに移籍したダルビッシュ有(現カブス)が「日本では燃えるものを感じなくなった」と話したときのことだ。内川は複雑な表情で「ダルビッシュにああいうコメントを言わせたぼくら日本の打者にも責任がある」と語っていた。この人は責任感もまた、51人中一番かもしれない。