第89回選抜高校野球大会第5日は24日、甲子園で1回戦が行われ、東海大福岡(福岡)のエース右腕安田(3年)が攻撃野球の神戸国際大付(兵庫)を封じ込め、32年ぶりの春勝利を挙げた。

 初回を3人で抑えた安田だったが、2回に下位打者に適時打を浴びて先制を許す。しかし、3回以降は打たせて取るピッチングで相手打線を4安打に抑えた。

 攻めては相手のミスを誘う勝負強さを発揮した。3回、二死一、二塁で3番北川の打球を神戸の遊撃・田淵主将(3年)が悪送球。その間に走者がホームを踏んで同点。9回一死一、二塁のチャンスでは8番橋本(3年)がショートゴロを打ってしまう。ダブルプレーで延長戦突入かと思われたが、二塁手が一塁に悪送球。サヨナラエラーを引き出して2―1で勝利した。

 直球が120キロ前後の技巧派サイドスローは、逆転勝利に「九州大会でも先制されることが多かった。いつも通りで焦りはなかった」と振り返る。三振はゼロながら、投げた95球のうち16個がフライアウト。「打たせて取れたのは球数も減るし、自分の投球ができた」と胸を張った。

 安田の好投に発奮したのが、腰の故障から昨夏にエースの座を降りた一塁手・佐田(3年)だ。「あんな投球されたら、僕も投げたくなりますよ。もっと甲子園を楽しみたかったけど安田はテンポが良くて、掲示板を見たら『もう9回か!』と思った」と語り、ムダ球知らずの投球に舌を巻いた。

 年明けには回復し、投げられる状態にある140キロ強の本格派右腕は「今日もイニングの合間にキャッチボールをして準備していた。次に機会があれば、僕も投げたい」と甲子園のマウンドに意欲をみせた。

 校名が変わってからは甲子園初勝利。東海大第五としては1985年に春2回戦敗退。次戦で勝てば歴史が変わる。安田は「超えるのが目標」と言葉に力をこめる。その相手は早実に決まった。「どんな相手でも自分の投球をしたい。力が通用するか試せる」(安田)。相手にとって不足はない。