明治神宮野球大会第5日は17日、神宮球場で行われ、高校の部の決勝は高松商(四国)が今春の選抜大会を制した敦賀気比(北信越)を8―3で破って初優勝した。四国地区は来春の選抜大会の「神宮大会枠」を獲得した。

 高松商の背番号1・浦大輝投手が最後の打者をセカンドゴロに打ち取ると、ナインが一斉に駆け出した。16日の大阪桐蔭戦のマウンドを急性ウイルス性腸炎で譲った浦は「おなか痛かったです。日本一になった実感は湧かない」とおどけてみせた。この憎めないエースの奮闘で、伝統校が見事に復活した。

 長尾健司監督は浦を「わがままで、とんでもない甘ちゃんです」と称す。「体調管理ができてないっていうのは、まだまだエースの自覚が足りない証拠。半袖のまんまおって、手洗いもせん。『はい腕通してー』とか『はいアーンしてー』とか、きっと家で全部親にやってもらってるんでしょう」。7日間にも及ぶ遠征は今回が初めて。親元を離れて自己管理の甘さが出たようだ。

 5回、この日先発の多田がつかまり2失点。浦に出番が回ってくる。「それでも弱気になってたので、部長と2人でハッパかけてやりました。『お前は本当に神宮のマウンドに立って勝負したいんか? 日本一の敦賀気比と勝負したくないんか』って」。腹をくくった浦は後続を打ち取り、その後も計4回1/3を投げ4安打1失点の好投。土壇場で期待に応えたエースを、長尾監督は「最後はビシッと決めてくれました。いい経験になったと思いますよ」とねぎらった。

 次の長期遠征は春のセンバツとなる。“甘ちゃんエース”は冬を越え、さらに一回り大きくなって帰ってくる。