第93回選抜高校野球大会(甲子園)決勝戦が1日に行われ、東海大相模(神奈川)が10年ぶり3度目の優勝を飾った。春夏通じて初の日本一を狙った明豊(大分)に3―2のサヨナラ勝ち。9回一死満塁から小島大河捕手(3年)が遊撃へ内野安打を放ち、激戦に終止符を打った。歴代最多に並ぶ3度目のセンバツ優勝監督となった門馬敬治監督(51)は、高校球界の「横綱」に君臨する大阪桐蔭・西谷浩一監督(51)への強烈なライバル心をエネルギーに、覇権を奪い返した。

 初回に先制され、すぐに追いつくも、4回に勝ち越しを許して中盤まで追いかける展開。門馬監督は「最後までしぶとく、執念を持って戦った。後半まで押されて、そこを崖っ縁で踏みとどまり、それが9回につながった」と辛抱強い戦いを称えた。2―2の6回二死一、二塁でエース左腕の石田(3年)を投入。ピンチをしのぎ、逆転の流れをつくった。最後は大会を通じて投手陣の好パフォーマンスを引き出した背番号「4」の正妻・小島がサヨナラ打。内野の要である主将の大塚(3年)を急性胃腸炎で欠く中、東の名門が伝統の勝負強さを発揮して紫紺の大旗をつかみ取った。

 高校球界の覇権を西から東に奪い返す優勝だった。「相模プライド」を発揮して10年ぶり3度目の春制覇。史上17人目となる甲子園通算30勝に到達した名将・門馬監督は、夏1回(2015年)を含む通算4度目の全国制覇。センバツ3度の優勝は監督として最多タイとなった。

 春の優勝回数で盟友に並んだ。門馬監督は、大阪桐蔭の西谷監督と同い年。かねて平時であれば、節目や全国大会で顔を合わせる際に食事をともにするほど仲がいい。ゆえに互いをライバル視してもきた。「東の相模、西の桐蔭」と呼ばれるまでになったのには、2人のライバル関係に深く起因するところがある。

 西谷監督は7度の全国制覇、通算55勝を誇る。相模の覇権奪回の裏に「西谷桐蔭」の存在は欠かせない。部員たちが口を揃えるほど、門馬監督の横綱・大阪桐蔭へのライバル心は凄まじい。

「監督さんが練習を止めて指導される際、よく言われるのが『桐蔭の選手なら今のはこう動く』『桐蔭の選手なら次はこう考えているはずだ』といった具合の話です」(ある選手)

 高校球界の横綱チームを倒すべく、普段から自軍の選手にハイレベルな練習を求めている。「監督も、僕らもめちゃくちゃ意識している。去年(夏)の交流試合で負けていたので、今大会はリベンジに燃えていたんですが…」(別の選手)と決勝当日にもかかわらず、大阪桐蔭の早期敗退を嘆く声すら聞かれるほどだった。

 門馬監督は独自の情報網で選手獲得にも熱心だが「県外選手は1学年9人」までと決めており、門馬監督の腹心・遠藤愛義コーチ(36)は「一番は地元志向。神奈川の生徒を中心としたチームづくり」と話す。近年は大阪桐蔭を含む強豪校の有力選手の激しい獲得合戦に不快感を示す高校野球ファンも多い中「1学年9人でも多い」という声もありそうだが、大阪桐蔭に比べれば少ない。そんなところにも大阪桐蔭への対抗意識が垣間見える。

 昨秋の関東大会準々決勝でサヨナラ負けしたチームが、見事な甲子園サヨナラ優勝。伝統の水色の縦じまに袖を通したナインが「相模プライド」を示した。