気迫のシャットアウトだ。中京大中京(愛知)は「第93回選抜高校野球大会」(甲子園)9日目の29日、第4試合で東海大菅生(東京)に6―0で完勝。プロ注目のエース右腕・畔柳亨丞投手(3年)が9回を138球で投げ切り、僅か2安打に封じ込めて今大会2度目の完封勝利を成し遂げた。

 25日の1回戦では専大松戸(千葉)を相手に完封。27日の2回戦の常総学院(茨城)戦も7回1失点とし、ここまで計241球を投じていた。聖地では中1日で3戦連続の先発となったが、立ち上がりから球威のあるストレートを主体に相手打線に的を絞らせず5回までノーヒット投球。9回こそ3つの四球を与えて二死満塁のピンチを招いたものの乗り切り、最後まで本塁を踏ませなかった。

 試合後は「1、2回戦で力んでしまって抜ける球が多かった。今日はいい疲労具合というか、いい力の抜け具合で投げることができたので、そこがいいピッチングにつながったと思う。相手チームを0点に抑えることが自分の使命。そこはクリアできて良かった」と笑顔を見せながら冷静にコメント。恐るべきタフネスぶりも満天下に示した。

 頼もしきエースを打線もしっかりと援護した。初回から櫛田(3年)の適時打などで計3点を先制。その後も効果的に得点を重ねて5回にも加藤(3年)が2点適時打を放つなど突き放した。

「野手が点を取ってくれて皆に感謝している。次戦に勢い付かせるためにも、やっぱり自分が1人で投げないといけないなと感じていた」と責任感の強いエースは力強い言葉を並べた。

「1週間で500球まで」の球数制限が設けられている今大会。その中でチームの初戦が大会7日目となったこともあり、ベンチの高橋源一郎監督(41)はエースの起用法で難しいゲームプランを強いられている。

 こうした背景を踏まえた上で指揮官は「継投も考えたが、最後まで畔柳で押し切った。今日の試合に勝つためにということ。先のこともあるが、今日がなければ次の試合はない。強力打線の菅生さんは一度火がついてしまうと止められない」と述べた。

 センバツでは準優勝した1997年以来、24年ぶりの4強進出。2回戦の勝利で単独トップに立った春通算勝利数も58へと伸ばした。

 31日の準決勝では第2試合で明豊(大分)と対戦する。準決勝のマウンドで畔柳の球数は残り121球となるが「今までのここ3試合の投球数では完投はできない。次は継投をしなければいけないと思うので、そこは考えたい」(高橋監督)。球数制限をにらみながらもエースを筆頭に一戦必勝のスタイルを貫き、中京大中京の面々は一丸となって1966年大会以来5度目の〝紫紺の大旗〟を手にする腹積もりだ。