第93回選抜高校野球大会(甲子園)第5日(24日)の第2試合はともに春夏通じて初出場の京都国際(京都)が延長10回の末、県立ながら昨秋の東北大会準優勝校・柴田(宮城)に5―4で競り勝った。3―3で迎えた10回、3番・中川(3年)の右前適時打などで2点を勝ち越し。粘る相手を振り切り、歴史的勝利を挙げた。

 聖地に韓国語校歌が流れた。韓国系高校である京都国際の校歌は開校以来、韓国語の歌詞を採用。甲子園の舞台に外国系校が進出したのは初めてとあって大きな話題を呼んだ。NHKの中継映像では韓国語のハングル表記と和訳が表示され「日本語訳は学校から提出されたものです」との注釈付きテロップとともに同校校歌の冒頭部分は「東の海を渡りし、大和の地は」と〝修正〟されていた。和訳は「東海を越え、大和の地は」となるが、日本海の韓国名・東海(トンヘ)は韓国側の主張によって「呼称問題」が発生しているセンシティブなワードであることから配慮がなされたものとみられる。

 SNSなどを中心にさまざまな意見が飛び交い、この日も一時、学校のホームページへアクセスしにくい状況が発生。球児のプレーよりも「校歌問題」に話題が集中したのは否めなかった。

 意外にも冷静だったのは学校側の対応だ。学校には大会前から「韓国語校歌」に対して、意見や採用経緯を確認する電話が相次いだ。同校の寒川稔也教頭は「さまざまなご意見を頂きました」とした上で、今後の校歌のあり方について見解を示した。

「これからは我々も柔軟に変わっていくことが、今いる生徒やこれから入ってくる子供たちにとって一番いいことだと考えています。いろんな意見を集約して、近い将来、校歌を変えたほうがより良い学校運営につながるのであれば、今の子供たちに合った新しい校歌を作る考えがあります」。少なくとも現場には、校歌問題に派生する無用な〝攻撃〟から生徒を守り、勉学や部活動に専念できる環境を整えるべきとの空気が強いという。

 アルプス席からは「プロ野球選手になりたい、甲子園に出たいと思って入ってくる生徒もいる。今を生きる生徒に創立当初の理念を背負わせる必要はない」との学校関係者の声も聞かれた。

 殊勲打の中川は試合後「校歌は気持ちよく歌えました」と胸を張り、その爽やかな対応が周囲の喧騒を打ち消すようだった。「5年後は甲子園に日本語の校歌が流れているかもしれません」(学校関係者)。舞台裏では穏やかな風が吹いていた。