【ズームアップ甲子園(28日):沖縄尚学(沖縄)8ー1白鷗大足利(栃木)】1ー1の同点で迎えた6回一死一、三塁の大チャンス。上原康は珍しく、エースの山城にベンチから「1点取ってくれ」と声を掛けられた。「気合も入ったし、助けたいと思った」と、初球から勢いよくバットを振り抜いた。「真っすぐが浮いてきたので」と、狙っていた直球を捉え、右翼への犠飛で貴重な勝ち越し点をもたらした。

 山城は初回にいきなり先制点を許したが、直後に2死一、二塁から上原康の右前打で追い付いた。その後は比嘉監督の指示とは裏腹に内角やや低めの球に手を出して一度も塁に出られなかった。

 だが5回終了後のグラウンド整備中に比嘉監督が指示を徹底すると、打線は息を吹き返した。6回の1点で流れをつかむと、7回には二死一、二塁から久保、西平の連続安打で3点。8回も4安打3得点と、リードを積み重ねた。味方の援護を受ければ、エースに怖いものはない。9回まできっちり投げ抜き8安打1失点。2戦連続の完投で今大会2勝目を手にした。

 6年ぶりベスト8進出。それでも満足はしていない。試合後、山城は「立ち上がりを課題としてマウンドに上がったのに、そこで失点したのは反省です。前もそうだったが、この試合も野手に助けられた」。2回二死二塁では遊撃の砂川が難しい打球を好捕。「あのプレーが自分の中でとても良かった」と感謝した。

 大きく足を上げるフォームから「琉球のライアン」と呼ばれる山城だが、チームメートは“ライアン”を禁句としている。「あの投げ方は(山城が)自分で考案したもので、マネはしていない」(ある選手)。一度は足を上げるのをやめようとしたが、勢いがつかずに今のフォームに戻した。当人は「同じように名前を出してもらっているので、その名前に恥じないようにしたい。でも意識はしていません」と淡々と話すが、「僕らはその名前を出さないようにしています」。エースに余計な負担が掛からないよう、仲間も気遣いを忘れない。

 この試合では、走者を出したイニングでは必ず得点した。抜群の決定力を見せたナインに比嘉監督は「(勝負強さは)大きい大会を経験してきたことが強みになったと思う」。昨秋の神宮大会王者らしく、堂々とした態度で勝ち星を重ねていく。