【第86回選抜高校野球大会(3月21日開幕)】広島の新庄が春夏を通じて初めて甲子園への切符をつかんだ。巨人にドラフト3位で入団した田口を擁した昨夏は広島大会決勝で引き分け再試合の末に敗れた。迫田監督は「去年の負けは監督のせい。ただ、ある程度、力をつけてきたという戦いぶりだった。私自身が自信を持ったことが大きい」と部員とともに悔しさを乗り越え、昨秋の中国地区大会では準優勝し、甲子園切符をつかみとった。

 チームの団結力は文武両道に裏打ちされたものだ。「赤点を取ると補習があるので練習には参加できない」(迫田監督)と朝練はなく午前7〜8時の1時間は部員同士で勉強会を行うなど野球だけではなく勉強にも注力。練習時間も一日3時間ほどと決して多くはない。しかし、そんな環境でも「考えて練習していくことで試合にも生かすことができた」(中林主将)と高い意識を持ち取り組むことでレベルアップを図ってきた。

“天敵”の雪も味方に変えた。冬には雪が積もり寒さが厳しい県北に位置する。寮に住む部員たちは朝6時に起床し、通学路の雪かきすることから一日が始まるが、「雪の上を走ることで下半身が強くなった」(山岡投手)とそれを生かした練習で肉体強化に成功した。

 部員は携帯電話もテレビも禁止。中林主将は「年末年始に地元に帰るまで、昨年の流行語大賞に選ばれた『倍返し』は知らなかった。『じぇじぇじぇ』の意味も分からなかった」というが、それだけ仲間とともに野球に勉強にと懸命に取り組んでいるということだ。

 広島商時代を含めて3度目の甲子園となる迫田監督は「平凡だが競り合いに強い。小差で耐え忍ぶ高校生らしいチーム。出る以上は優勝を目標に自分たちの力をいかんなく発揮したい」と一気に頂点を目指すつもりだ。