新型コロナ禍の中で開催中の「2020年甲子園交流試合」は12日で前半戦を終えた。中止となった今春のセンバツ選出校の救済措置ながら、様々な制約の中で球児たちは聖地を謳歌し、熱戦を繰り広げている。このまま15日から始まる後半戦も無事に終えると、その先に“来年の春”は見えてくるのか。舞台裏の苦闘と合わせて、異例ずくめの聖地の夏を深掘りしてみた。

 交流試合が実現したことで運営側は「これでセンバツもできる!」と確信している。センバツ選出校の救済措置として32校を甲子園に“招待”。1試合限定ながらも熱戦が繰り広げられ、世間の反応も追い風になっていることで主催者関係者は「いい状態で試合が進んでいる。ガイドラインを作ったといっても日々手探りで、臨機応変に対処しないといけないことばかりですけどね。以前のような批判は少なくなったと思うし、好意的に見てくれていると思う。秋季大会さえしっかりできればセンバツもできる。お客さんを入れての通常開催に戻せる」と鼻息を荒くしている。

 3月4日、政府がイベント自粛を呼び掛けるなか、高野連はセンバツの無観客開催の方向性を発表し、世間から猛批判を浴びた。それが今は「Go To キャンペーン」などタイミングの悪い政策と後手後手の対応で政府が批判されるケースが多く「イベントをやる側としたら追い風になっている。政府が悪者になってくれるとやりやすい」(関係者)側面もあるという。

 交流試合は対策を徹底し、入場できるのは野球部員、指導者1人につき、その家族は5人まで。スカウトも1球団2人までと限定し、報道陣も制限をかけるなど、細心の注意を払って開催にこぎつけた。通常の聖地とまったく違う景色となったが、実績ができたことで関係者は「これがセンバツへのたたき台になる」と手応えを感じている。

「秋季大会では感染者が多い地区があるなら、例えば東京を避けるとか、少ない地域でできるよう知恵を絞ればいい。神宮大会が無理なら神宮枠に代わる枠を設ければいい。各地で今回のような対策をやり、秋季大会ができたらセンバツもできる。仮にコロナが選手や関係者に出たとしても必要以上に怖がらず、冷静に対応すればいいんです」。センバツでは有観客での開催を視野に入れ「入場料収入がやはり大きい。テレビの放送権料なんか微々たるもんですから」と期待を膨らませた。

 今回は救済措置の意味合いが大きく、勝負論が希薄になった印象は否めない。頂点を奪い合うシ烈な戦いが本来の姿であり、選手もそれを望んでいるはず。交流試合の成功を何とかセンバツへの懸け橋にしたいところだ。