夏の甲子園の主役は誰か――。「2020年甲子園高校野球交流試合」(8月10~12日、15~17日=甲子園球場)の組み合わせ抽選会が8日、32校の主将によるオンライン形式で行われ、全16試合の対戦カードが決定した。昨夏決勝の再現となる履正社(大阪)―星稜(石川)、常勝軍団の大阪桐蔭(大阪)―東海大相模(神奈川)、神宮大会を制した中京大中京(愛知)―智弁学園(奈良)など、強豪対決が目白押し。そんな中、プロスカウトが目を光らせる注目選手を投打にピックアップした。

 交流試合は春の選抜大会中止の救済措置として32校を甲子園に招待する形で行われる。新型コロナウイルス感染拡大の影響で多くの学校が満足な練習ができず、迎える交流試合も1試合だけの夢舞台。それでも選手は感謝の気持ちを胸に全力で戦いに向かう。

 第4日第1試合では昨夏を制した履正社が決勝の相手となった星稜と再び激突。履正社の関本主将は「星稜は投打ともにレベルが高い。(チームは)一人ひとりが課題を持って高い意識で頑張れている。感謝の気持ちを持って全力で頑張りたい」と話し、星稜の内山主将も「履正社は特に打撃力が高い。昨夏の借りを返す。見ている人に元気を与える試合をしたい」と意気込んだ。

 昨夏の決勝、星稜は大会を席巻したエース・奥川(ヤクルト)が井上(阪神)に被弾して力尽きた。その奥川の“一番弟子”だった荻原が背番号「1」を背負い、寺西とともに制球力、変化球に磨きをかけた。打線も捕手に転向した内山を中心に秋季大会で3割超えの打者がズラリ並び、履正社へのリベンジに燃えている。迎え撃つ履正社も昨夏決勝のマウンドで勝ちどきを上げた岩崎がエースに君臨し、最速145キロのストレートと三振を取れる変化球を自在に操る。打線は元阪神・関本賢太郎氏を父に持つ関本、小深田、池田ら長打力は申し分ない。

 さらに第6日第1試合では百戦錬磨の大阪桐蔭が、全国屈指の強力打線を誇る東海大相模と激突。こちらも「打力の高いチーム」(大阪桐蔭・薮井主将)、「毎年強く、総合力のある素晴らしいチーム」(東海大相模・山村主将)と、お互いの印象を口にし、火花を散らす。昨年は甲子園出場のなかった大阪桐蔭だが、エース左腕の藤江を中心に打線も西野、仲三河、船曳らハイレベルな戦力が整った。一方の東海大相模も昨夏の甲子園経験者が8人残り、特に打線は俊足巧打の鵜沼、高校通算32本塁打の加藤、44本塁打の山村、53本塁打の西川ら超ド級のスラッガーがズラリ。長年、西の横綱に君臨してきた大阪桐蔭を撃墜する可能性は十分だ。

 プロスカウトの視線をクギ付けにしそうなのは昨年の春夏4強の明石商(兵庫)のエース・中森だ。最速151キロのストレートを武器にスライダー、カーブ、フォークとすべてに精度が高く、超高校級の本格派右腕。4日の智弁和歌山(和歌山)との練習試合では9球団のスカウトが見守るなか、5回1失点11奪三振とさすがの内容を披露し、本来の状態に戻してきた。チームは第5日第1試合で桐生第一(群馬)と対戦。その投球に注目が集まる。

 中森同様にドラフト上位候補なのが、中京大中京の右腕高橋だ。昨秋の神宮大会を制し、今年の初戦となった6月20日の愛工大名電との練習試合で最速153キロをマーク。プロスカウトも「スライダー、チェンジアップもいいけど、一番の魅力は真っすぐ。対戦相手がスピードについてこれない。秋から大会を追うごとに目を見張る成長を見せている。おとなしい性格だけど、マウンドとの落差がすごい」と舌を巻く。第3日第1試合で強豪・智弁学園との対戦で最速更新を狙っている。

 野手なら明石商・来田が走攻守に優れた逸材だ。広角にはじき返すパンチ力があり、昨春の智弁和歌山との準々決勝では甲子園史上初の「先頭打者&サヨナラ本塁打」をマーク。打席で背中を大きく反らす独特のルーティンで存在感を示し、スター性も十分だ。

 一発の魅力なら東海大相模の“飛ばし屋”西川が一番だろう。高校生離れしたパワーで打線の中軸を成し、芯に当たればライナーで場外に消えていくこともある。秋の公式戦9試合で打率5割2分9厘、4本塁打をマークし、通算53本塁打。昨夏が無安打に終わっただけに何としても大阪桐蔭相手に結果を残したいところだ。他にも日本ハム・中田を思わせる豪快スイングが魅力の星稜・内山、高校通算47本塁打の花咲徳栄(埼玉)のスラッガー井上、内外野をこなす智弁和歌山のリードオフマン・細川らも目が離せない。