【韓国・機張発】「第29回WBSC U18ベースボールワールドカップ」が30日、当地で開幕し、高校日本代表は初陣のスペイン戦に4―2で逆転勝ち。7回まで2安打無得点と封じられたが、最後は集中打で覆した。ただ、相手は前回大会に出場すらしていない“野球後進国”。先の戦いに向けて不安が募るなか、昨年のU18アジア野球選手権に出場した先輩から緊急エールが送られた。

 日本は先発の池田(智弁和歌山=3年)が4回につかまり2失点。打線はスペイン先発ルナの130キロ台前半の球を打ちあぐね、7回まで2安打無得点と苦戦を強いられた。

 日本らしさが出たのは2番手投手に代わった8回だ。代打宮城(興南)が内野安打で反撃の口火を切ると、2番坂下(智弁学園)がセーフティーバントで失策を誘い、二死一、二塁から韮沢(花咲徳栄)、石川(東邦)、遠藤(東海大相模=いずれも3年)のクリーンアップが3連続適時打を放って、一気に4点を奪って逆転した。

 まさかの苦戦だった。球数制限による投手交代がなければ、そのまま押し切られていた可能性も十分にある。130キロ台のボールにてこずった理由について、先発マスクをかぶった山瀬(星稜=3年)は「ボールが動いて芯を外された。日本ではあまり見ないタイプの球筋でした」。国際大会特有のムービングボールと木製バットへの対応という課題が改めて浮き彫りになった格好だ。

 失点した場面では右翼手の横山(作新学院=2年)がボールを後逸して傷口を広げたが、そもそも本職は中堅手。スタッフの一人は「同じ外野とはいえ、スライスする打球の処理はライトの方が難しい。選考から外野手が下級生2人で、他をコンバートでまかなう急造の外野陣。韓国戦や米国戦では外野に打球が飛ぶ機会も多いでしょうし、大きなミスが出ないといいが」と不安の色を隠せない。

 格下相手にナメてかかったわけではないだろうが、研究不足という面もあった。スペインに関する情報は、分析担当コーチが前日29日の公式練習を見ただけ。永田裕治監督(報徳学園前監督)も「昨日の公開練習を見た島田コーチから守備がいいとは聞いていたが、ここまでとは…。昨日は野手のみの練習で、投手は全然データがなく、先発の子も分かりませんでした」と認めるしかなかった。データ不足は以前からの課題で、今大会から新設した分析担当コーチの役割も機能していたとは言いがたい。バット、選考、対策…と、あらゆる面での油断や準備不足が足をすくわれかねない結果につながった。

 頼みの綱の“令和の怪物”佐々木朗希投手(大船渡=3年)はこの日、4日ぶりにキャッチボールを行い「コンディションは万全ではないが、全力を尽くしたい」と話したが、登板日は未定のまま。悲願の世界一を目指す日本代表だが、不安は尽きない。