「第29回WBSC U18ベースボールワールドカップ」(30日開幕、韓国・機張)高校日本代表は27日、国内での合宿を打ち上げ。侍ジャパントップチームの稲葉監督も激励に訪れ、悲願の世界一へ向けた戦いがいよいよ始まる。そんな中、活躍が期待される“令和の怪物”佐々木朗希投手(大船渡=3年)にアクシデントが発生。佐々木中心のローテーションを懸念する声も上がっている。

 出国を翌日に控えたこの日、ナインは軽めの練習で汗を流した。トップチームの稲葉監督も練習を視察。「国際大会では初戦というのがすごく大事。投手にとっては1球目、野手はファーストストライクと『1』にこだわってやってほしい。1球目に自分のボールが投げられる、初球から自分のスイングができると、それが2、3とつながっていく。侍ジャパンはトップチームもアンダーも同じユニホームを着て戦う。全世代の選手が一丸となって、世界一を目指してほしい」と激励した。

 前日の壮行試合では大学日本代表を相手に引き分けに持ち込み、チームの士気も上々だが、そんな中でアクシデントも発生した。先発した佐々木の右手中指に血マメができ、1イニングで降板。高野連の竹中事務局長は「当初は2イニング行く予定だったのが、悪化させるといけないということで大事を取った。回復は個人差もあるので、状態を見て。当面はノースロー調整になる」と説明した。甲子園の疲労が残る奥川(星稜=3年)とともにダブルエースの活躍が期待されるだけに、2人の起用法をめぐっては様々な意見が出ている。

 大会ではオープニングラウンド5試合をこなし、上位3チームがスーパーラウンドに進出。日本が入るBグループには米国、台湾、スペイン、南アフリカ、パナマが入っているが、米国に敗れてもスーパーラウンドに進めるため、あえて佐々木、奥川を最大のライバルである米国戦で隠すことも可能。スーパーラウンドでは韓国、カナダ、オーストラリア、オランダなどとの対戦となるが、球数制限にかからない範囲で奥川らを投入、決勝で満を持して佐々木、奥川のリレーでつなぐというプランが現実的だ。

 ただ、登板を重ねていく上で、佐々木に今回のようなアクシデントが再び起きないとも限らない。永田監督は「起用法はこれから。向こうに行って状態を見て決めます」と現段階では白紙を強調しているが、高野連関係者は「永田さんは佐々木中心の投手起用を考えているようだが、いつ不調を訴えてくるかわからない現状では佐々木頼みのローテーションは危険」と話している。実際、相手チームの分析を担当する島田コーチは「場合によっては佐々木、奥川を使わずに戦うことも考えないといけない」としており、この日は主に投手起用を担当する平川コーチが佐々木、奥川らと話し込む場面も見られた。

 一方、一部では佐々木の守護神プランも浮上しているが、前出の高野連関係者は「抑えで考えていては投手陣が総崩れになる可能性もある。いっそのこと、決勝の米国戦のみを見据えた一点勝負もアリでは」と、見解を語った。

 岩手県大会では自身の登板回避で甲子園出場を逃し、今大会こそ大車輪の活躍を誓うものの、一方でアクシデントのイメージも絶えない佐々木。再び決勝で投げられないという事態を回避するためにも、最初から「決勝一本」で調整するのも一つの手だろう。

 本人は「これから慣れないところに行くが、それでも自分たちの力を出し切って世界一になりたい」と語るが、高校日本代表悲願の世界一は“ガラスのエース”の起用法にかかっている。