ついに悲願達成だ。第101回全国高校野球選手権大会は22日、決勝戦を迎え、履正社(大阪)が星稜(石川)を5―3で下して初優勝。大会ナンバーワン右腕の奥川(3年)から11安打5点を奪って“春の雪辱”を果たした。チーム一丸となって「打倒・奥川を果たして全国制覇」を合言葉に見事成し遂げた裏には、名将・岡田龍生監督(58)への思いがあった。

 マウンド付近に履正社ナインの歓喜の輪ができると、多くの面々がうれしさのあまりに号泣。周囲に「俺は泣いたことがない」と吹聴していた岡田監督もベンチを出ると思わず男泣きした。

「何とも言えない気持ちで夢のようです。子供たちがよくやってくれました。泣くことはないだろうと思ったが、涙が出てしまいました」

 その言葉通り“孝行息子”たちがマウンド上の星稜・奥川に連打を浴びせた。1点をリードされた3回。二死から2者連続四球で一、二塁とすると、4番・井上(3年)が初球スライダーをバックスクリーン左へ逆転3ランを放った。同点とされてからの8回にも4安打を集めて奥川から2点を奪い、粘る星稜を最後は突き放した。
「やっと(奥川に)勝てたので、とにかくうれしい気持ちでいっぱいです」と涙で目を真っ赤に腫らしたのは井上だ。

 今春のセンバツ1回戦では星稜・奥川に屈辱の17三振を喫し、わずか3安打で0―3と完敗。その時から「打倒・奥川を果たして全国制覇」を合言葉に打撃を磨いてきた。その言葉通りに雪辱を果たしての初Vだけに、指揮官も「奥川君がチームを大きくしてくれた」と感謝の念を忘れなかった。

 奥川へのリベンジだけではない。選手たちは日本一達成後、岡田監督との夢プラン実現のためにも必勝を期していた。指揮官との“ミニバイク隊結成”だ。

「岡田監督は学校に時々、50㏄バイクの『ホンダ・モンキーR』で通勤して来るんです。その姿が意外と“おちゃめ”な上に楽しそうで…。だから僕らも卒業してある程度大人になったら、原付きが運転できる免許を取り『監督とともにミニバイクで一緒にツーリングに行ければいいなあ』とみんなで言い合っているんです。監督もきっと『嫌だ』とは言わないと思いますし、快く受け入れてくれるんじゃないでしょうか」

 こと野球に関しての話になると手厳しいが、岡田監督は常に選手たちの体調を気にかけている。加えて独特の“ダミ声”の持ち主であるところもチーム内では「怖いけど愛嬌のある監督」として慕われている。

 数年後、岡田監督率いる“履正社ミニバイク隊”が初優勝メンバーたちとともに結成されることになるかもしれない。