第101回全国高校野球選手権大会で、下馬評を覆す快進撃を続けているのが、岐阜代表の中京学院大中京。ここまで臨んだ3試合全てで試合終盤に大量得点を重ね、劇的な逆転勝利を挙げている。作新学院や東海大相模などの強豪校を破ってのベスト4進出は、まさに今大会きってのダークホースといえるだろう。果たして、その「終盤の粘り強さ」の要因はどこにあるのだろうか。

 同校OBで日本ハムの高卒3年目・今井順之助内野手(21)は、その根底にあるものとして、橋本哲也監督(55)の独特な人心掌握術を挙げた。

「僕も1年の秋からお世話になりましたが、社会人野球でも監督をされていた方だからか、人との接し方がとてもうまいんです。部員のことも決して子供扱いはしないし、怒るときもしっかりこっちの話を聞いてから、筋が通ってない部分だけを怒っていただけるんですよ。理不尽なことは絶対言わないし、自分たちを一人の『男』として見てくれてるんですよね」

 旧体質な体育会系の指導とは違い、その誠実な対応が部員の心をつかんでいるという。また「普段は落ち着いたダンディーな大人なんです。感情を大きくは出さない人で(作新学院戦の逆転の際に)ガッツポーズをして喜んでいる姿は初めて見たくらいです。それだけうれしかったんでしょうね」と師の性格についても明かした。

 続けて「監督のそばにいると、何の指示もないのに部員がまとまるんですよね。部卒の生徒は卒業後に『なんか発言が落ち着いているね』と周囲から言われることも多いらしいです。雰囲気が似てくる? そうなのかもしれませんね(笑い)」と、橋本監督の「ダンディズム」が無意識に浸透しているのでと推測した。


 それだけ信頼している監督だからこそ、どんな采配でも心から受け入れられるのだろう。今井は「(同校の特徴は)バントをほとんどしないこと。走者一、二塁の場合はバントで二、三塁に進めてから、確実に安打で返すのがセオリーなのかもしれませんが、監督の指示は『どんどん打っていけ!』。積極的に打ち勝ちにいくことで、ビッグイニングが生まれるんだと思います」と劇的勝利の要因を分析した。

 そんな中京学院大中京も、優勝まであと2勝に迫った。準決勝の相手は優勝候補筆頭の星稜(石川)。得意の打ち勝つ野球で、またも番狂わせを起こすか――。