「令和の怪物」こと大船渡・佐々木朗希投手(3年)が2日、岩手県内の球場で佐久長聖(長野)との練習試合に登板。今年になって最多となる149球で完投し9安打4失点(自責3)13奪三振4四球という内容だった。この登板には日米10球団、計18人の編成やスカウトが集結したが日本ハム・吉村浩GM(54)は12球団の先陣を切って「1位指名」を明言。その上で同時期の二刀流・大谷翔平投手(24=エンゼルス)との比較について「投手としてだったら佐々木君の方が上かもしれない」との見解を示した。日本ハムが「大谷以上」と評価する佐々木の可能性とは…。

 毎回の13三振こそ奪ったものの、最速は153キロにとどまり要所でも変化球主体の投球。「最後の夏」となる7月の岩手県大会に向けた調整登板で9安打に4盗塁を許し3暴投、1ボークと不安定な側面も見せた佐々木の投球は決して圧倒的ではなかった。

 スタンドのファンからは「相手が振り遅れているのに何で真っすぐで押さないのか!」という不満も漏れていた。

 日本テレビ系「Going!」の取材で訪れた「昭和の怪物」こと評論家・江川卓氏(64)は「自分の場合、練習試合でも全力で投げていたし、調整というものがなかった。ここのところがどうなんだろう。佐々木君もそろそろ全力でいかないと、という時期。その全力がいつ出るのかを楽しみにしたいと思います」と意識して球速を抑える163キロ右腕の調整法に私見を語った。

 期待値が高過ぎるがゆえに見る者の多くが消化不良を感じてはいたが、数十年に一人の逸材を追いかけるプロの評価は揺らいでいなかった。

 その中でも昨年暮れから佐々木の1位指名を示唆していた日本ハムはこの日、12球団の先陣を切って吉村GMがそれを正式に表明。「間違いなく1位で指名します。(本人が)志望届を出す前提だけど、評価としては比較検討にならない。他の候補へのリスペクトはあるけど(能力が)圧倒的すぎる。今年に限らずウチが過去に評価してきた選手と比べてもそう。来週のスカウト会議ではっきり決めます。その方がスカウトも動きやすい」と明言した。

 また同GMはOBで12年ドラフトの1位・大谷との比較を「球団内の評価で言うと投手としてだったら佐々木君の方が上かもしれない。そのぐらいの評価をしている」と10・17ドラフト4か月半前に敢然と1位指名を公言した揺るがぬ決意の根拠を示した。

 その評価の一端ともなるのか。大谷ドラフトの当時、GM職にあり獲得の陣頭指揮を執っていた山田正雄スカウト顧問(74)は佐々木と大谷の違いについて「コントロールの精度」を挙げた。

 同顧問は高校3年時点での両者を比較し「大谷はコントロールがもうひとつなかったが、佐々木君は投げたいところにほぼ投げられている。大谷はフォーム的に少し緩さがあって、リリースポイントがあまり定まっていなかった。一方で佐々木君はそこが決まっている。制球のセンスがあるというのかな。大谷と同様に体には柔らかさがあるんだけど、彼は左足がものすごく上がって左の股関節が柔らかい」と制球を安定させる土台の違いを指摘した。

 常に自身の高排気量エンジンと格闘し、その制御と安定が投球のテーマとなっていた大谷と、高3時点でそれをコントロールでき、理想的な“サスペンション”を持つ佐々木。互いに強靭な走力を持つ同じフィジカル・エリート同士でありながら、大谷をしのぐセンスとコントロールを備える「令和の怪物」に二刀流ロスから2年目を迎えた日本ハムはその「投」の穴埋めを求めているようだ。