大船渡の163キロ右腕・佐々木に自警団誕生

2019年05月07日 16時30分

小さな球場は観客ですし詰め状態

 岩手の至宝を守れ! 163キロ右腕・佐々木朗希投手(大船渡=3年)出現に沸く岩手で高野連、学校、地域住民が三位一体となった厳戒態勢が敷かれている。春季岩手大会では予選から早くも“朗希フィーバー”一色。これまでにマリナーズ・菊池雄星投手(27)、エンゼルス・大谷翔平投手(24)の怪物を立て続けに輩出しながら、関係者が「前例がない」と頭を抱える騒動の構図を探った。

 高田との沿岸南地区予選決勝が行われた6日、収容人数700人の住田町運動公園野球場には観衆約2100人、報道陣50人が詰め掛けた。駐車場は第1試合前から満車となり、近隣の臨時駐車場9か所を開放。沿道では地元の野球部員が「満車」や「違法駐車禁止」と書かれたボードを持って対応に追われた。お目当てはもちろん、歴代最速高校生の佐々木だが、待望の登板は見送りに。4月30日に行われた角館との練習試合でもDHで出場するなど、大船渡・国保陽平監督(32)による慎重な起用が続けられている。さらに3日の初戦に続き、この日も及川捕手(3年)の取材は「戦略上の理由」からNG。岩手県高野連からは報道陣に試合自体の“取材自粛”が文書で通達されるなど、異例の厳戒態勢が敷かれている。

 同県の高校野球関係者は「去年の段階では正直ここまでではなかった。国保監督は絵に描いたような真面目な青年監督で、女性部長の吉田先生も野球経験がない。いわゆる“マスコミ慣れ”していないこともあって、佐々木の代になってから取材方針をめぐって県高野連と話し合いが持たれたと聞きます」と高野連主導の警備の実態を語る。

 これまでのスター選手と佐々木が決定的に異なるのは、公立校出身という点。県内からは雄星、大谷に次ぐ3人目の大物高校生となるが、当時は強豪私立の花巻東が主体となって警備にあたっていたため、県高野連にもノウハウがないのだという。県高野連の大木事務局長も「雄星や大谷の当時から人も代わっているし、学校の方針も違う。春の段階でこれだけ注目されていて、隣県秋田の輝星くんのときとも事情が違う。参考にできる例は少ないですが、ノウハウがない中でなんとかやっていかないと」と頭を抱えている。

 すべてにおいて前例のない状況だが、フィーバー対策には地域住民も協力姿勢を見せている。この日観戦に訪れた大船渡在住の70代男性は「高野連の方針には賛成よ。田舎もんはすぐ調子に乗る。まだ高校生。あんまし騒いでもいいことね」。別の60代男性は「今の時代、動画だのSNSだのですぐネットさ、あげられるべ。地域の目で不審なよそ者が近寄らないよう、おれがたも見回りせな。本人が日本でやりたいって言ってんだから、外人さんも要チェックだ」と有志の自警団による米国スカウトへのけん制も仕掛けていくという。

 熱狂に躍らされることなく金の卵を地域ぐるみで守っていく“朗希フィーバー対策本部”。騒動や混乱を未然に防ぎ、過去のスター同様に令和の怪物を送り出せるか。