「令和の怪物」の行く先は、日本か米国か――。高校生歴代最速の163キロ右腕・佐々木朗希投手(大船渡=3年)の進路を巡り、日本国内だけではなくメジャースカウトも大注目している。すでに「世界トップレベル」との呼び声も高い佐々木は日本と米国、どちらでプロとしてのキャリアをスタートさせるのがいいのか。意外にも、メジャースカウトの間ですら意見は割れている。

 4月5日から3日間行われたU―18高校日本代表の合宿では、高校生の日本歴代最速となる163キロを計測。きたるべき新時代の幕開けを飾るかのような鮮烈なデビューに、日米スカウトの数は日増しに膨らんでいる。その後の練習試合にも日米20球団40人のスカウトが集結するなど、あらためて注目度の高さをうかがわせている。

 球速だけではなく、その将来性からも評価はすでに青天井だが、気になるのは怪物の進路だ。本人は早くからNPB一本を掲げているが、岩手の球界関係者は「大船渡の国保監督はアメリカの独立リーグでプレーした経験を持ち、米球界の人脈もある。佐々木に関してもアメリカ式の指導法で厳しい球数制限を設け、大切に育てていると聞きます。多感な年齢ですし、本人の志望がアメリカに揺らぐ可能性は十分ある」と見ている。

 では、世界トップレベルとも称される佐々木の育成には、国内と海外、どちらの球団が合っているのか。ナ・リーグ球団のスカウトは「これまで高校生は一度、日本球界を経由したほうがいいと思ってきたが、この子は別格。育成に限ってはメジャーのほうが絶対にいい。何より、すでに日本でやることがない。それくらいのピッチャー」と断言。

 その上で「公立校出身で練習量が足りていないし、あれだけの速球は肩、ヒジに大きな負担がかかる。アメリカは球数制限を厳守させるし、投げ込みもさせないが、日本の現場主導の球団などでは結果を急ぐあまり壊しかねない。それでなくとも今までのびのびやってきた田舎の子が、周囲の声やプレッシャーが大きい人気球団の環境に入ったら潰れてしまうでしょう」と日本球界の環境についても危機感を募らせる。

 一方で、ア・リーグ球団のあるスカウトは「大事に扱ってくれる球団、大谷のときのように彼を中心にローテーションを組んでくれるような、寛大な球団であることが条件ですが、日本球界を経由したほうが彼のためにはいい。潜在能力は規格外ですが、経験値と耐久性は未知数。競争力のあるところで一度もまれたほうが本人のためになる」と“条件つき”でNPB入りを後押し。

「高校生で160キロは素晴らしいですが、アメリカではいとも簡単に打たれます。それでかわすような変化球や小手先の技術を覚えて、小さくまとまってほしくない。日本でならストレートだけで十分抑えられる。そうやって臆病にならず、剛速球を磨いていったほうがいい」と日本でプレーするメリットを説明する。

 即メジャー挑戦の前提しか頭にないと思われたメジャースカウトの間ですら、意見が二分する佐々木の今後。“令和の怪物”は日本で力を蓄えるのか、すぐさま海を渡るのか。果たして――。