みちのくの163キロ右腕、佐々木朗希投手(大船渡=3年)の周辺が騒がしくなってきた。すでにメジャーを代表する大物代理人事務所の関係者が「本人周辺への接触を開始している」との情報がNPB球団間を駆け巡り、日本サイドはピリピリ。今秋ドラフトの超目玉を巡り、スカウティング、交渉の不公平感が日米摩擦を引き起こそうとしている。

 7日まで奈良県内で行われていたU―18高校日本代表第1次候補による「国際大会対策合宿」。6日の紅白戦で国内アマチュア史上最速となる163キロのストレートを計測した佐々木に日米12球団のスカウトが揃って度肝を抜かれた。

 注目される進路については、現状では佐々木本人が「(日本の)プロ一本。メジャーへの思いは今はないですけど、これからその時その時で考えていきたい」と語っており、大きな故障さえなければ今秋ドラフトの競合1位指名は間違いないだろう。

 しかし、その裏では国内12球団のスカウトから「紳士協定」の裏側でやりたい放題の一部メジャー球団や大物代理人事務所への不平不満が鬱積している。あるNPB球団スカウトは「またああいうことが繰り返されるのかと思うとうんざりしますよ。こっち(NPB球団)がいくらルールを守ってスカウティング活動をしても、そのルールの外にいるメジャー球団は『紳士協定』の名の下に裏ではやりたい放題じゃないですか。彼らはルールを逸脱しても罰則があるわけではない。一体、この問題は誰に訴えて調査をしてもらえばいいんですかね?」と、スカウティングの日米格差にやり切れない不満を隠せない。

 暗に訴えているのは2009年の花巻東・菊池雄星(現マリナーズ)、12年の同・大谷翔平(現エンゼルス)のドラフトイヤーに巻き起こった一部メジャー球団スカウトと指導者の個人的な“癒着”や対象選手の親族への接触といった取り込み手法についてだ。NPB球団が行えば確実に罰則の対象となる違反行為についても、ルールの外にいるMLB球団はその対象外。そこを突いて高校に出入りする用具メーカーやマネジメント事務所、時に代理人と組んで対象選手周辺に接触を図ろうとするメジャー側に今から厳しく「けん制球」を投げ込んでいるというわけだ。

 その一方では「スコット・ボラス事務所の関係者がすでに佐々木君の実家や(大船渡の)国保監督の周辺に接触を図っているという情報は各球団が共有している」(前出スカウト)。かつて西武時代の松坂をレッドソックスに送り込み、現在はマリナーズ・菊池と契約する米大物代理人の日本事務所の担当者がすでに岩手に乗り込み、実家周辺から契約に向けた突破口を探っているという情報にNPB球団側は戦々恐々としている。

 ドラフト半年前から早くもヒートアップする佐々木狂騒曲。今後、夏から秋へと進むにつれ、この騒動は果たしてどんな展開を迎えるのだろうか。