【ズームアップ甲子園】第91回選抜高校野球大会は25日、1回戦3試合が行われ、第3試合で山梨学院(山梨)が大会タイ記録の24安打の猛攻で札幌第一(北海道)に24―5で大勝した。“山梨のデスパイネ”こと野村健太外野手(3年)は2本塁打を含む3安打5打点と活躍。「(昨夏の甲子園では)1安打だったから、3安打は成長したと思う。次の試合も自分の前に走者が出たらかえしたい」と笑顔を見せた。

 主砲の打棒爆発の裏には“聞くも涙”のアナザーストーリーがあった。山梨学院の寮には部伝統の“おかわり強要担当”なる役割があり、現在その役目を務めているのが野村。夕食の際に「おかわり!」と叫んで選手を指名し、茶碗にご飯をよそう。体を大きくすることが目的で、断ることはできない。結局、ほとんどの選手がおかわりを強いられ、苦悶の表情を浮かべるのだという。

 そんな中で“例外”だったのが野村だ。身長180センチ、体重88キロの巨体から繰り出すパワーが売りだが、太りやすい体質で100キロに届かんばかりのときもあり、吉田洸二監督(49)に食事制限を課せられていた。選手が内情を明かす。

「野村はおかわりせず、野菜ばかり食べている。あいつだって食べるのは好きなんです。おかわりをしない人はお菓子とジュースが禁止になるルールがあったので、あいつは『アイスが食いたい』とうなっていた」

 野村はおかわりすることなく「俺の分も食え」とばかりに、泣く泣く他の選手におかわりを強要していたわけだ。

 しかし、今大会は宿舎で監督が夕食に同席しないため、選手たちは自由に食事ができるという。「宿舎でおかわり指名はない。野村はバクバク食べています。それがストレス解消になって打てたのかも」(前出選手)。制限されていたおかわりができて、甲子園では本塁打をおかわり。解き放たれた野村の食欲とバットは勢いを増しそうだ。