第91回選抜高校野球大会(3月23日から12日間・甲子園)の出場校を決める選考委員会が25日、大阪市の毎日新聞大阪本社で開催され、32代表が決まった。昨年の甲子園で春夏連覇し、史上初のセンバツ3連覇、3季連続優勝を狙った注目の大阪桐蔭(大阪)は落選したが、昨秋の関東大会コールド負けで出場は難しいと見られていた横浜(神奈川)が、プロ注目左腕の及川(およかわ)雅貴(2年)を高く評価されて“逆転選出”。スター選手の存在が選出を左右したのではと波紋が広がっている。

 激戦区の近畿(6枠)は昨秋の近畿大会を制した龍谷大平安(京都)、準優勝の明石商(兵庫)、ベスト4の履正社(大阪)、智弁和歌山(和歌山)が順当に選出され、残る2枠は福知山成美(京都)と市和歌山(和歌山)に決まった。

 大阪桐蔭、福知山成美、市和歌山、報徳学園(兵庫)はいずれも同大会の準々決勝で敗退。福知山成美と報徳学園がゼロ封負けしたのに対し、大阪桐蔭は智弁和歌山に2―5と健闘していた。

 選考理由について選考委員は「ベスト8からまずベスト4を選んで残り4校を比較検討した。報徳は打力が足りないことで意見が一致した。残り3校は均衡したチームで決め切れないところもあったが、京都は地区大会で3位の平安が近畿で優勝し、2位の京都国際も初戦で明石商に接戦負けするなど、レベルが高いという判断。大阪桐蔭はなかなかチームとして出来上がっていなかった」と説明した。

 日本高野連の竹中事務局長は大阪桐蔭の落選について「集客を考えると公平な判断ができない。参考となるのは近畿大会。ファンの方は寂しいとおっしゃる方もいると思うが、あくまで名前で選考しているのではないということ」と語ったが…。波紋を呼んだのは関東・東京の6枠目だ。

 選出されたのは昨秋の関東大会で春日部共栄に2―9でコールド負けを喫した横浜。東京大会決勝で国士舘(東京)と3―4の接戦を繰り広げた東海大菅生はまさかの落選となった。地域性の面から見ても同じ神奈川の桐蔭学園が選ばれているため「東海大菅生か、佐野日大(栃木)か」とも見られていたのだが…。

 ネット上では疑問の声も広がっており、長年甲子園ネット裏の最前席で観戦を続ける「甲子園のラガーさん」こと善養寺隆一氏(52)も「ちょっといくらなんでも強引だよね。東海大菅生か佐野日大の争いと思ってたのに、ふたを開けてみればまさかの横浜。東海大菅生は前にも当落線上で落とされたことがあったけど、今までコールド負けの学校が選ばれることはまずなかった。今回横浜を予想してた人は一人もいなかったのでは」と驚きを隠さない。

 疑問の残る選考について、ラガーさんは「たぶん、横浜のエース及川君(2年)の存在が大きい。U-15でもエースを務めたプロ注目の投手。高校では伸び悩みが指摘されてるけど、今大会は大阪桐蔭をはじめ、有名校や注目選手がことごとく地方大会で負けて、全体としては地味な大会。有名どころは神宮大会準優勝の星稜(石川)のエース奥川君(2年)くらい。集客を見込みたい高野連としては、伝統があって名門の横浜、注目選手の及川君を選ぶことで、オールドファンを集めたい思いがあったのでは」と高野連の思惑を語った。

 実際、関東・東京地区担当の選考委員は、選考理由について「及川君は大会屈指の投手。ストレートも152キロでスライダーで三振が取れる。非常に能力が高い。秋の公式戦の奪三振率は12・85。1年生で甲子園を経験してさらに成長している。おそらく活躍すると思うし、ドラフト1位も間違いない。それくらいの逸材です。星稜の奥川君くらいいい。立ち上がりが荒いところがあるが、三振はすごいですよ」と絶賛。“及川ありき”で選出を決めたと受け止められかねない説明だった。

 例年、センバツ選考にはこの手のモヤモヤがつきもの。とはいえ、選出された球児たちには全力を出してプレーしてもらいたいものだ。