【赤坂英一 赤ペン!!】「絶対大丈夫」――今年25年ぶりに優勝と日本一を達成したヤクルト・高津監督の名文句だ。セ・リーグMVPとなった主砲・村上は「打席に入る前に自分の中でも『絶対大丈夫』と言っていた」。主将・山田も「言われたことを信じようと思った」と、高津監督の〝言葉力〟を絶賛。球団グッズの応援タオルにもなっている。

 この「絶対大丈夫」が、実は都市対抗野球大会で東京ガス初優勝にもひそかに〝貢献〟していた。2回戦に先発して勝ち星を挙げた東ガスの左腕投手・高橋佑樹(24=慶大)は、高津監督が日本シリーズ前、「絶対大丈夫」と言っていたテレビインタビューを見て「勇気をもらった」と言うのだ。

 小6でスワローズジュニアに参加していた高橋は、もともと熱烈なツバメ党。今大会でも「絶対大丈夫」タオルをベンチに持ち込んでいたほど。初先発だった2回戦では2四球8安打と再三ピンチを招いたが、そのたびに「絶対大丈夫」と自分に言い聞かせ、6回1失点で勝利投手となった。

 ちなみに、高津監督も試合中、自らマウンドに足を運んだ時は、投手に必ず「絶対大丈夫!」と言い聞かせていた。そういう時、マウンドにいた山田によれば、「監督が投手にそう言うと雰囲気がよくなった」という。

 東ガス・高橋は初勝利を挙げた試合後、会見で「絶対大丈夫」タオルを披露。都市対抗前に日本シリーズを全戦観戦したと、こう熱弁を振るった。

「高津監督の采配がすごかったですね。2敗した抑え(マクガフ)を最後(第6戦)にロングリリーフで使ったり、延長戦で川端さんのタイムリーで試合を決めたり。とにかくすごかったです」

 ところがその夜、一部メディアがネット上で、勝ち越し打を打った加藤雅樹捕手(24=早大)をヤクルトファンと勘違い報道。これを見た高橋がツイッターで「僕とごっちゃになっています」と訂正する一方で、加藤が「ヤクルトファンになりました」とツイートして笑わせる一幕もあった。

 都市対抗の決勝では、ホンダ熊本との大接戦の末に6―5で東ガスが初優勝。プロ最古の歴史を誇り、創立88年目に突入した巨人より長い、創部94年目での悲願達成である。山口太輔監督をはじめ、選手たちが感激に浸る中、金メダルを首にかけた高橋は、ここでもまた「絶対大丈夫」タオルを高々と誇らしげに掲げていた。

 高橋の目標は慶大時代からプロ入り。これからもっと力をつけて、ヤクルトに指名されるほどの投手になってほしい。

☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。日本文藝家協会会員。最近、Yahoo!ニュース公式コメンテーターに就任。コメントに「参考になった」をポチッとお願いします。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」(講談社)など著作が電子書籍で発売中。「失われた甲子園」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。他に「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。