【赤坂英一 赤ペン!!特別編】現在開催中の都市対抗野球には、10月のドラフトで指名された社会人選手15人のうち14人が出場している。彼ら新人たちにはプロ入り前の格好のお披露目の場なのだが、誰もがいいところを見せられるとは限らない。

 1回戦で最も残念だったのは巨人ドラフト2位・山田龍聖(21=JR東日本)の投球だ。11月29日のホンダ熊本戦に先発して8回を投げ、三振10個を奪いながら、1本塁打を含む7安打3失点で負け投手。視察にきた原監督、水野スカウト部長の前で結果を残せなかった。

 山田は試合後「ストレートの精度を上げないといけない。スライダーにもバラツキがあった」と自己分析。原監督らの登場で注目された影響については「これから何度も経験することなので、しっかりと対応したい」と今後の課題とした。

 来年、こういう新人のメンタルをどれだけ強化できるか。チーフに昇格した桑田投手コーチの腕の見せどころだろう。

 一方、1回戦で最高の結果を出したのがソフトバンク4位・野村勇内野手(24=NTT西日本)。28日のエイジェック戦の9回、同点に追いつき、なお一死満塁から左前へ会心の逆転サヨナラタイムリー。来年のキャンプ一軍スタートを明言している藤本博史新監督にもいいアピールとなった。

 野村は本来、昨年指名されるはずだったのが、左有鉤骨骨折で1年だけ見送られた経緯がある。社会人では内外野の兼用だったが、プロではショートに固定される予定。

「僕自身ショート一本で勝負したい。実力的にはまだまだですが、頼れるショートを目指したい」

 不動のショート・今宮の牙城を切り崩せるか。新体制ソフトバンクの見どころのひとつだろう。

 オリックス6位の横山楓投手(23=セガサミー)のお披露目登板では、元広島の西田真二監督が粋な演出をしてみせた。9点リードの9回、1失点の先発・草海から横山に交代。最終回を打者3人で締めさせたのだ。最速は149キロをマークした。

 横山は最近まで調子を落としており、都市対抗2次予選で防御率11・57と打ち込まれた。そこで気楽な場面で投げさせた西田監督「ドラフトで指名されたんでお披露目したかった。よかったんじゃないでしょうか!」と自画自賛していた。

 横山は宮崎学園出身。高3で1学年下のエース山本由伸(都城)と投げ合い、負けた経験を持つ。当時はプロ志望届を出しても指名されなかった。これまでの悔しさを晴らす活躍を期待したい。

☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。日本文藝家協会会員。最近、Yahoo!ニュース公式コメンテーターに就任。コメントに「参考になった」をポチッとお願いします。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」(講談社)など著作が電子書籍で発売中。「失われた甲子園」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。他に「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。