【赤坂英一 赤ペン!!】西武が優勝、日本一になる年は必ず生え抜きの新4番が誕生した。過去の監督を振り返ると、森に清原、東尾に鈴木健、伊東に和田、渡辺に中村と長距離砲が並ぶ。そういう“伝統”にならえば「辻には山川」となった今年、西武が10年ぶりに優勝する確率は高い。

 山川の最大の特長は、自ら「4番になりたい」と宣言して現在の地位を築いたことである。

 昨季は自己ベストの打率2割9分8厘、23本塁打、61打点をマークしたが、出場試合数は約半分の78。おかげで契約更改での提示額は、年俸1600万円から3000万円(金額は推定、以下同)までのアップに抑えられた。これに山川は「最低でも倍増は譲れません。4番を勝ち取るために納得してサインしたいんです」と、倍額アップを要求したのだ。

 12球団の中でもひときわ内部規定が厳しい西武にあって、保留は実に7年ぶりという異例の事態だった。そういうプレッシャーにひるむことなく、山川は約200万円の上積みを引き出して希望額をクリア。入団4年目とはとても思えぬずぶとさである。

 こうして念願の4番に座ると、ふだんの練習態度から変わった。山川本人がこう言っている。

「毎日、早起きするようになりました。昔は寝ていられる時間ギリギリ、(昼)11~12時ごろまで寝てましたけど、いまは10時に起きます。12時過ぎには球場へ行って、アーリー(早出練習)の前に体操したりストレッチしたりしてる。しっかり準備するのも4番の仕事だと思うんで」

 清原の時代なら早出練習は若手のやること。4番こそ出勤時間ギリギリまで寝ていたものだが、時代は変わった。

 そこで気になるのが、そんな山川に引き換え、4番の先輩・中村にいまひとつ精彩がないこと。開幕3カードで1日の日本ハム戦(5番)を除いて6番に入れられ、打率も本塁打も山川に後れを取っている。かつて4番だった時代はこう話していた。

「4番だからといって、走者をかえすことや打点を挙げることにはこだわらない。どんなときでもホームランを狙うのがぼくの打撃ですから」

 そう言って、どんなに三振が増えてもお構いなし、2年連続で本塁打王と三振王になった2008~09年が懐かしい。34歳は長距離砲として脂が乗る時期。山川から4番を奪い返すぐらいの気構えを見せてほしい。