「子供たちに夢を与えたい」と語っていた元メジャー右腕・ロアイザが麻薬逮捕だなんて…

2018年03月28日 11時00分

【球界こぼれ話 広瀬真徳】先月、個人的に残念なニュースがあった。元メジャー投手のエステバン・ロアイザ(46)が、麻薬所持や密輸容疑等で逮捕された件だ。

 ホワイトソックスなど計8球団で通算126勝を挙げた同投手は、20キロ以上に及ぶヘロインやコカインを売買目的で米サンディエゴの自宅に所持。すでに裁判が開始され、有罪が確定すれば禁錮20年以上の可能性があるという。

 ロアイザは麻薬取引が横行し、今も治安悪化が著しいメキシコ・ティフアナ出身。私自身も2000年代前半に当地を訪問したことがあるが、米国境から一歩街に入ると何とも言えない不穏な空気が漂っていたことを思い出す。街中にいる人々の表情に笑みはなく、子供たちは観光客を見つけるや否や瞬時に集結。側転やバック転を披露しながら執拗にお金をせびっていた。ロアイザは現役引退後、その街に接するサンディエゴで暮らし続けていた。何らかの形で薬の誘惑に負けてしまったのかもしれない。

 ただ、私の心中では、この事件、いまだに信じ難い。現役時代のロアイザは麻薬に手を染めるほどの“ワル”には見えなかったからだ。

 03年、米シカゴで行われた球宴前日に彼と偶然話す機会があった。

 私が取材に疲れ、球場近くのカフェで休息を取っていると、深々と帽子をかぶったロアイザが隣席に座った。当初、私は翌日の大舞台で先発する右腕とは気づかなかったが、周囲のファンや店員がしきりにサインを求める姿を見て本人と認識。チラ見しながら様子をうかがっていると、向こうから突然声をかけてきた。

「キミもメジャーが好きで、ここに来たのか?」

 不意の問いかけに戸惑いながらも、私は記者であり、球宴取材でこの地を訪れた経緯を伝えた。それからおよそ15分間、球宴先発投手と奇跡的に雑談することができた。その中で彼が力説したのが「子供たちに夢を与える存在になりたい」という願望だった。この出来事以来、私は彼に少なからず興味を抱き、活躍を期待していた。実際、彼はその年に奪三振のタイトルを獲得し、21勝をマーク。その後も3年連続2桁勝利を飾り、名実ともにメキシコを代表する投手に成長した。そんな右腕が15年の時を経た今、麻薬犯罪で逮捕されたのだから胸中は複雑である。

 親戚でも知人でもないとはいえ、取材した選手が堕落する姿は見たくない。ロアイザには残りの人生で罪を償い、子供たちに夢を与える存在として立ち直ってもらいたい。

 ☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心に、ゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。