カブスからFAとなり、10年ぶりに巨人復帰した上原浩治投手(42)が11日、ジャイアンツ球場で今季初めて打撃投手を務めた。亀井ら打者4人に41球。日米球界を渡り歩いた右腕には、同僚となった投手陣も色めき立ち「上原塾」への“入門依頼”が殺到している。

 球場の視線を独り占めにした。NPB公式球や米国よりも軟らかいマウンド、打者との感覚を取り戻すべく、二軍合流2日目から打撃投手を志願した上原は亀井、石川、宇佐見、ドラフト4位ルーキー・北村拓己内野手(22=亜大)と対戦。1巡目は全球ストレートで2巡目は球種を予告しながら直球、スプリット、スライダーを投げ込んだ。安打性の打球は7本で最後の亀井への直球は右翼へ柵越えされたが、上原は「やっと野球をしているなという感じでした。打者がいた方がすごく投げやすい。気持ちよかったです」と笑顔で振り返った。

 度肝を抜かれたのは、試運転の段階から右腕のすごみを感じ取った野手陣だ。亀井が「ひと言で言うならさすがですね。球種が分からないと打てない。42歳が投げる球じゃない」と脱帽すれば、石川も「フォーク(スプリット)の腕の振りが(直球と)変わらない。マジ、エグいです」と絶句。宇佐見も「球種を言われなかったらフォークは全部振ってました。コントロールも(ストライクゾーンの)隅に来ていました」と一軍出場経験のある3人が揃って白旗を掲げた。

 各打者に大きな刺激を与えたが、それ以上に前のめりなのが投手陣だ。上原が培った知識や経験、技術を聞き出そうとFA戦士や助っ人、ベテランから若手までそれぞれのテーマを持ってスタンバイしている。

 西武からFA移籍1年目の野上は「コントロールですかね。どういう感覚で投げているのか。見て聞いて、逆に僕の投球も見てもらいたいです。何か困った時のヒントになるかもしれない」。救援陣の柱で巨人7年目のマシソンも「(上原は)チームを強く、ブルペンをさらに強化してくれる。ワールドシリーズでチャンピオンにもなり、野球選手が目指す夢をすべてかなえた人。彼の動きを見て自分にとって役に立つことがあれば、こちらから願ってでも積極的に話をさせてもらいたいよ」と貪欲だ。

 さらに、年齢に見合った体づくりが毎年大きなテーマとなるベテランたちの手本にもなる。内海が「そういった話ができればいい」と関心を示せば、2年目の19歳ホープ右腕・高田も「僕のフォークは(昨年の)秋からなのでまだまだですけど、そういうことも聞いてみたい。キャッチボールを見ていても(直球の)回転が全然違う。二軍にいらっしゃる間に聞き切れるか…」と目を輝かせた。

 上原は今後、打撃投手として2度登板した後、二軍戦に出場する予定。自身の調整だけでなく“塾長”としても大忙しとなりそうだ。