阪神が今季V奪回のキーマンに「意外な男」を指名している。昨季限りでオーナー付のフロント職を終え、新設された球団本部付テクニカルアドバイザー(TA)に就任した前監督の和田豊氏(55)だ。

 和田TAといえば2012年から4年間の監督時代に藤浪をドラフト指名で引き当て、14年にはチームを日本シリーズにまで導いた虎一筋の人物。だが、球団史上初の現役監督で野球殿堂入りした金本監督の印象が強く、失礼ながら現在では話題に上ることも少ない。それでも、あるフロント幹部は「金本監督やコーチ陣の頑張りだけでなく、今年は和田TAの分析力もものをいうかもしれない。もともとは星野、岡田監督時代と2度の優勝にコーチとして貢献してくれた。データを細かくチェックし、生かせるすべを持っている。当時の星野監督や田淵さん(当時のチーフ打撃コーチ)も『優勝できたのもあいつのおかげ』と感謝していたほど。現場も助かるんじゃないか」と一転して“熱視線”を送っているのだ。

 理由は昨季まで名誉職だけに終わっていた和田TAに「新ミッション」が加わったからだ。TAの新仕事は新外国人選手などの映像、資料を見て編成部、フロントに助言を送るなどの内容になっていたが、球団は遅ればせながら今季から高性能弾道測定器「トラックマン」を本格導入し、甲子園で稼働させることを決定。投手では球の回転数や回転角度、打撃では打球の角度や飛距離などの計測が可能になる優れモノで、メジャーも含め、国内でも多くの球団がすでに設置している。それに「和田TAにも協力してもらう」(フロント幹部)と今回新たに「トラックマン分析チーム」の一員として、辣腕を振るうことになったからだ。

 分析チームには捕手としてオリックス、阪神でもプレーした日高球団本部企画担当らも在籍し、和田TAは「(トラックマンを)どう生かしていくかが大事。チームのため、自分がやれることはやっていく。経験も生かしていきたい」と気合十分だ。また、同時に今春3月に開校する「タイガースアカデミー」の特別顧問にも就任することも決定。近畿一円の野球少年を対象にした指導も行う。現場への“陰の戦力”から未来の選手発掘まで…と大忙しの前監督に注目だ。