阪神がFA権を行使してDeNAに移籍した名手・大和内野手(30)の“流出後遺症″に今もなお悩まされている。

 過去にゴールデン・グラブ賞を獲得したものの、今季の便利屋的扱いから確固たる出場機会を新天地に求めた大和に、金本監督は「チームとしては痛いが、彼が選んだ道だから尊重したい。(代わりは)いないようでいる。若手にとってはチャンスになる」とナインの競争意識を鼓舞。来季の遊撃手争いは鳥谷からポジションを奪ったものの今季不振に泣いた北條を筆頭に糸原、植田、故障禍からの本格復帰を目指す西岡、指揮官期待の大山らがひしめき合う「激戦区」だが、その盛り上がりよりも大和流出の喪失感の方が大きい。

 ある球団幹部はこうタメ息をつく。「今言っても仕方ないが、レギュラー確約してでもやっぱり大和には残ってもらいたかった。何とかならなかったのか、とは思う。大和の穴はなかなか埋まらない。高田さん(DeNAのGM)が言っていた『大和は守備で失点を防ぐことができる戦力』はまさにその通り。北條の守備は二塁がベターで、糸原も監督の期待は大きいけど、守備範囲など問題がある。来年いきなり守備の要を求めるのなんて絶対に無理。秋季キャンプに参加した西岡が元気で期待できそうだが、1年は持たない。大山も打力を生かすならショートはやめといた方がいいかも」

 確かに大和には球団も全力で慰留に努めた。しかし、契約年数、出場機会など基本条件の見直しを含めた再交渉については「誠心誠意尽くした」(四藤前球団社長)と打ち切り。金本監督直々の残留要請もなかった。それだけにもしも…の思いも強いのだろう。もともと頼みのセンターラインが確立できないまま大和まで失った阪神。年の瀬でなおさら心配なのだろうが、何とかするしかない。